そして、金正恩氏は自分の生命が国内よりむしろ国外から脅かされていると思い込んでいるのかもしれない。
昨年秋から米韓軍は、北朝鮮の首脳部、すなわち金正恩氏に対する先制攻撃を意味する「斬首作戦」を導入した。斬首作戦とは、「南北の緊張が激化して衝突の可能性が高まった際、北朝鮮が全面戦争を決断する前に、先制攻撃で意思決定機関を除去してしまおう」という考え方だ。万が一南北が開戦した際、最終的には米韓連合が勝利するだろう。しかし、緒戦でソウルを「火の海」にされ、経済が甚大なダメージを受けるのは避けられない。それを防ぐための作戦である。
とはいえ、民主主義国家である韓国が、国民や議会のコンセンサスもなしに、失敗すれば核で反撃されるリスクの高い作戦導入に突き進むことは難しい。現状では斬首作戦は、あくまでも金正恩氏に心理的圧力をかけるレベルだ。しかし、彼にとっては相当な効果があり、それが今年の公開活動の回数激減に結びついていると筆者は見ている。