2010年初め、黄海南道(ファンヘナムド)に駐屯する朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第4軍団のある師団長の専用車が、軍総政治局の会議に参加するため平壌に向かっていた。中国製の新型SUVを与えられて上機嫌だった師団長は、運転兵に「飛ばせ」と命じ、前方のクルマを次々に追い越した。
しかし運悪く、その中に金正恩氏が運転するメルセデスベンツのS600があったのだ。
翌日、軍総政治局の会議場に、その師団長の姿はなかったという。軍事行政トップである人民武力相のささいな言動に激高し、文字通り「ミンチ」にして処刑してしまう正恩氏の気の短さを考えれば、師団長とともに運転兵までもが悲惨な末路を辿ったであろうことは想像に難くない。
(参考記事:玄永哲氏の銃殺で使用の「高射銃」、人体が跡形もなく吹き飛び…)これと似たようなエピソードは、ほかにもある。
(参考記事:北朝鮮の高速道路で「金正恩氏の愛車」に道を譲らないとどうなるか)人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真
いまも生死の境をさまよっている今回の亡命兵士は、追手が雨あられと銃を乱射する中、徒歩で軍事境界線を突破している。どれほどの危険が身に迫れば、そこまでの行動に出られるものなのだろうか。