北朝鮮においては、金正恩氏や金与正氏の兄妹などですら、子どもの頃は振る舞いが目立たないようにしつけられる。それなのにチェ・ウンチョルは、名門校の父母たちの間で実力者然として振る舞っていた。
ある日、学校に問題が起こった。梅雨の長雨で排水設備が詰まってしまい、運動場が泥の海になったのだ。学校当局は問題解決のために塩化ナトリウムと塩化カルシウムを撒くことにしたが、大量に入手するのは簡単ではない。そこで、白羽の矢が立ったのが、チェ・ウンチョルであった。
話を聞いたチェ・ウンチョルは、数千ドルの大金を注ぎ込んで10トンの塩を買い込み、トラックで学校まで運んで運動場にぶちまけたという。まさに権力を見せつける行為だが、日頃から彼を検閲(査問)する機会をうかがっていた朝鮮労働党の組織指導部は、このような行為を事細かく記録していた。