「だいぶ前にあの辺に行ってみたことがあるが、当時は化学肥料の工場があった」(元公務員のAさん) 「あそこには、近くの烽火(ポンファ)化学工場で精製された石油の貯蔵施設がある」(Bさん)
いずれも不確かな記憶に基づく証言であり、火災の原因と関係あるとは限らない。ただ、「化学肥料」「石油」と聞くと、思い浮かぶことがある。化学肥料に使われる硝酸アンモニウム(以下、硝安)と燃料油が混ざると、「硝安油剤爆薬」というシロモノに化ける。北朝鮮の龍川(リョンチョン)では2004年4月、これが大爆発して8000棟の建物が吹き飛び、1500人が死傷する悪夢のような大事故が起きているのだ。
北朝鮮では、このような惨事が度々起きている。たとえば中国との国境地帯にある慈江道(チャガンド)の江界(カンゲ)市で1991年、ミサイルや砲弾を製造していた軍需工場が大爆発を起こし、市街地の相当部分が壊滅。1000人を超える死者が出た。
(参考記事:【目撃談】北朝鮮ミサイル工場「1000人死亡」爆発事故の阿鼻叫喚)しかしそれにしても、2004年の龍川での事故には妙な点が多かった。