責任者はいずれも解任、左遷、降格の処分を受けた。ところが、李女史は何ら罪を問われていない。噂では、夫を通じて事故の調査担当者と、その上級機関である組織指導部にワイロを掴ませ、もみ消しを図ったようだ。その甲斐あってか、報告書から事故の背景と原因についての記述は大幅に抜け落ちている。
事故の遠因は、金正恩氏の後継者としての足場固めのために、金正日氏が無理に業績づくりをさせようとしたことにある。また、速度戦などと言った精神論を振りかざし、質を省みようとしない北朝鮮の旧態依然とした体制、根を下ろしはじめたばかりで、形骸化した計画経済の残滓と共存するいびつな資本主義もある。
しかし、事故の教訓は生かされなかった。同じ年の10月、楽浪(ランラン)区域で建設中だった38階建てのマンションの一部が崩壊し、多くの死傷者が発生した。多発する事故を見た平壌市民はいま、新築マンションを恐れ、築20〜30年の古いマンションを好んでいるという。
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