日本海沿岸では昨年から今年の初めにかけて、北朝鮮のイカ釣り漁船とみられる木造船と、北朝鮮漁民と見られる遺体の漂流、漂着が急増した。背景には、不足する外貨を稼ぎたい国家が「漁労戦闘」と呼ばれる無理な漁獲増大キャンペーンを繰り広げ、それに、一獲千金を目指す庶民が呼応している実態があると言われる。
米政府系のラジオ・フリー・アジアは最近、かつて北朝鮮でイカ漁に従事したことのある脱北男性のインタビューを掲載した。その要約を以下に紹介する。
「帰らぬ漁師、近所だけで数十人」
2004年夏、咸鏡道(ハムギョンド)のある港。キム・チョルミンさん(仮名、当時38歳)は、イカ漁で商売のタネ銭を稼ぐという希望に胸を膨らませ、疲れも忘れて漁船に乗り込んだ。