舞台となった端川水力発電所の建設は、日本の統治時代から構想90年にわたる北朝鮮史上最大のプロジェクトであり、金正恩党委員長が完遂を厳命しているものだ。現場には全国各地の様々な集団から、建設部隊が派遣されている。
それぞれの部隊は所属する集団の上層部から、「何が何でも建設に貢献すべし」との使命を帯びている。この事業でどのような評価を得るかが、その集団に対する金正恩氏の評価に直結し、配給や外貨稼ぎの利権など経済的利益を得る道にもつながるからだ。
もちろん、派遣された部隊員たちもそのことを熟知している。ここに、日本の敗戦直後のヤクザの親分のようなカリスマと暴力性を持つリーダーが加わると、他を蹴散らしてでも上を目指そうとするエゴイズムが生じるのだ。
それでも、労働環境がまともならば、このような事件にまでは発展しないだろう。