キム・ヘギョン氏は張成沢氏の死後、政治犯収容所へ送られたという。だが、張成沢の巻き添えになって粛清された女優の中には、彼の愛人でも何でもなかった人もいる。代表的なのが、2007年にカンヌ映画祭でも上映された北朝鮮映画「ある女学生の日記」に主演した「清純派女優」のパク・ミヒャン氏だ。
同作品に出演した彼女の映像を見ると、実にういういしい。このように世界的に顔を知られた女優が、一夜のうちに姿を消してしまうのが北朝鮮社会の現実なのだ。
(参考記事:【動画】北朝鮮の女子高生「タイマン」場面…映画『ある女学生の日記』)それも、彼女には何の落ち度もないにかかわらずである。彼女が夫や幼い息子とともに政治犯収容所に送られた理由は、夫の父である前駐スウェーデン大使のパク・クァンチョル氏が、張成沢氏と近しい間柄だったというだけのことだ。
金正恩氏はそこまでして、張成沢氏の存在の痕跡を徹底的に消し去ろうとした。しかし、いくら「禁止リスト」に載せて厳しく取り締まったところで、多くの国民に親しまれた俳優たちの記憶を、社会から完全に除去することなど不可能だ。
(参考記事:【写真】北朝鮮の国民的美少女・洪英姫と映画「花を売る乙女」)そしてむしろ、金正恩氏がそのようにムキになればなるほど、権力中枢の歪んだ内実を国民に知らせることになってしまったのである。(つづく)