この4月、中国の北朝鮮レストランの女性従業員ら13人が集団脱北した事件を巡り、北朝鮮当局が責任者6人を公開処刑したとの情報が浮上している。聯合ニュースが29日、韓国の民間団体、戦後拉北者被害家族連合会の崔成龍(チェ・ソンリョン)理事長の話として報じた。
美女たちを指名手配
崔氏は平壌消息筋からの情報として、金正恩党委員長の指示により、5月5日に平壌の姜健(カンゴン)総合軍官学校で国家安全保衛部(秘密警察)の要員ら責任者6人が公開処刑されたとしている。(関連記事:北朝鮮、脱北ウェイトレスたちの顔写真を公開)
同氏はさらに、「国家安全保衛部、偵察総局、外務省、人民保安部の幹部80人余りと海外派遣労働者の家族100人余りが見守る中で処刑が行われたらしい」と説明。一方、脱北した従業員の家族らについては、妙香山(ミョヒャンサン)の施設に拘束され思想教育が施されたとしている。
この情報が事実かどうか、現在のところはわからない。だが、姜健総合軍官学校では2014年10月にも公開処刑が行われており、その時の様子が衛星画像で捉えられている。今回の情報が事実であれば、その様子が衛星に補足されていた可能性はある。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真
また、2014年の公開処刑は、殺し方も残忍きわまりないものだった。大口径の機関砲で人体を文字通り「ミンチ」にしてしまうというもので、そのやり方は玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)前人民武力部長の公開処刑でも踏襲されている。
鬼の形相の死刑囚
北朝鮮当局が、集団脱北事件を体制の危機ととらえていることは明らかだ。そのことは、もともとはエリート家庭出身の脱北ウェイトレスらを「指名手配」するかのような挙に出て、心理戦を繰り広げていることからもわかる。
(参考記事:金正恩氏に「指名手配」された脱北美女たちの運命)北朝鮮レストランに限らず、労働者の海外派遣は北朝鮮にとって貴重な外貨獲得手段だ。その現場では、国家安全保衛部の監視要員らが暴力を駆使し、労働者の統制を行っている。それでも、集団脱北事件は起きてしまった。そのような場合、責任者を公開処刑して「引き締め」を狙うのは、北朝鮮当局の常とう手段である。
(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」)正恩氏らにとっては、大量の派遣労働者が雪崩を打って逃げ出す事態が、いま何よりも恐ろしいことなのかもしれない。