韓国政府系シンクタンクの統一研究院は18日、ソウル市内でセミナー「北朝鮮の人権実態および政策会議」を開催。北朝鮮の教化所(刑務所)などで行われている拷問の実態について明らかにした。
公開処刑が日常茶飯事
同研究院北朝鮮人権研究センターのハン・ドンホ副研究委員の報告によれば、中朝国境地域の咸鏡北道にある全巨里(チョンゴリ)教化所は、3000~4000人の収監者のうち、中国から強制送還されてくる脱北者の割合が高い。ここでは、収監者に対する暴行が日常化しており、栄養失調や疾病などで毎日1~2人が死亡。また、伝染病により1日に30~50人が死亡したこともあり、家族には収監者が死んだことすら伝えられなかったという。
ハン氏はまた、「中国から北に強制送還された妊婦の場合、中国人の子どもを身ごもったという理由で収監前に強制的に中絶させられる」と明らかにした。
一方、重罪犯が主に収監される平安南道の介川(ケチョン)教化所では、拷問で負傷してもそのまま放置され死亡し、収容所から脱走すれば公開処刑される。やはり3000~4000人が収監されている同教化所では、栄養失調によるものも含め、毎日3~4人が死亡しているという。
(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」)性的暴行やむち打ちも
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真同センターのイ・サンシン副研究委員の報告によれば、北朝鮮においても、刑法によって拷問が禁止されている。教化所は北朝鮮国内でも秘密の存在である政治犯収容所とは異なり、法に基づいて運用されている施設だ。それにもかかわらず、拷問が横行しているのである。
イ氏は、「北の警察や司法システムで暴力は欠かせない。警察や収容所管理人は責任を逃れようと囚人を別の囚人の拷問に参加させている」と指摘。国家安全保衛部(秘密警察)と人民保安部(警察)、軍当局が取り調べなどで恒常的に拷問を行っているとした。拷問は殴る蹴るのほか、むち打ち、電気ショック、性的暴行、強制堕胎、水責めなどがあるという。
(参考記事:北朝鮮、拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も)セミナーではまた、北朝鮮から海外に派遣された労働者たちに対する人権蹂躙についても報告されている。
(参考記事:アキレス腱切断、掘削機で足を潰す…北朝鮮労働者に加えられる残虐行為)こうした内容の大部分は、実はこれまでに明らかにされていたものだ。今回のセミナーは、北朝鮮における人権侵害の実態を改めて想起させ、具体的な対策作りに向けたステップとする目的がある。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真そしてその背景には、米国政府が人権侵害の責任を問い、金正恩党委員長を制裁指定するなど、朝鮮半島情勢において人権問題が大きなファクターになりつつあることがある。
日本政府もこうした流れを注視し、人権面からの対北朝鮮アプローチを再検討すべきではないだろうか。