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北朝鮮東北部の水害「町全体が消え去り200人死亡」

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北朝鮮北東部を襲った台風10号(ライオンロック)による被害が、甚大なものとなっている。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、今回の水害による北朝鮮での死者は133人、行方不明者395人、被災家屋は3万5500世帯に達し、今後さらに増えるものと思われる。中には地域そのものが消滅したケースもある。

北朝鮮当局は9月10日、朝鮮労働党中央委員会の名義で、全国民に向けて水害復旧に立ち上がることを訴えるアピール文を発表するなど、被災地の復興に本腰を入れる姿勢を見せている。また、金正恩党委員長は、各道からの5000人と突撃隊(建設労働者)、朝鮮人民軍など10万人を派遣することを指示した。これは「核実験ばかりやって、民生を放置している」との不満が高まるのを抑える目論見があるものと思われる。

一面が泥の海

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、中央からの「復旧人員として5000人を選抜せよ」との指示に伴い、各工場、企業所では割り当てられた数だけ人員を派遣することになった。水害の復旧にこれほどの大人数が投入されるのは初めてのことだという。それだけ被害が深刻だということだ。

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一例を挙げると、製紙工場、建材工場、協同農場、金正日氏の母親である金正淑氏が利用していた船着き場と革命史跡記念碑などがあった会寧(フェリョン)市の望陽洞(マンヤンドン)は、一面泥の海と化してしまった。川沿いに立っていた国境警備隊の哨所(監視塔)も多くが流され、兵士多数が死亡したと伝えられている。あまりの惨状に、市民は復旧に立ち上がる気力すら失っている。

また、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、豆満江の支流、会寧川沿いにある会寧市の江岸洞(カンアンドン)でもすべての住宅、公共施設が流され、人口1000人のうち、200人が死亡または行方不明となっている。茂山、穏城も同様の惨状で、昨年に羅先で起きた水害の何倍もひどいと言われており、民心は荒んでいる。

氷点下20度の冬

金正恩氏は、朝鮮労働党創建記念日の10月10日まで復旧を完了せよとの指示を出しているが、1ヶ月ですべて終えられるのか疑問だ、あまり期待できないとの声が現地から上がっている。

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まずは作業員用の宿舎を建設してから復旧作業を進めるとのことだが、期間設定に無理があると指摘されている。昨年、羅先で建てられた水害復興住宅が、「速度戦」という事実上のやっつけ仕事で建てられたため、水が漏れて壁が崩れる有様だということを会寧の人々もよく知っている。

また、動員される10万人のうち、5万人は技術のない民間人なのでさほど役に立たないだろうと言われており、10万人分の宿と食料も、確保の目処が立っていない。

この地域では9月末に初霜が降り、11月には雪が降り、1月には氷点下20度以下になる。冬を越すための住居が求められているが、住民の間からは「冬が来るまでに家はできないだろう」と嘆く声が聞かれる。

「核でメシが食えるか」

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そのような状況で行われた5回目の核実験は、荒んだ民心をさらに荒ませている。

咸鏡北道の別の内部情報筋は「経済制裁で暮らし向きが悪くなり、今年の農業生産もパッとしない状況での核実験を見て『核がメシを食わせてくれるのか』『むしろ制裁が強化されて、庶民が苦しむだけ』などと口々に話している」と現地の声を伝えた。