北朝鮮当局は、朝鮮労働党第7回大会(5月6日)を前に、住民に対する統制を強化。その一環として、韓流ドラマをはじめとする外国の映像作品など「違法録画物」に対する取り締まりを行っている。しかし、デイリーNKの内部情報筋によると、庶民たちは「ある秘密兵器」によって取り締まりに対抗しているという。
中学生男女が「野外」で…
北朝鮮で、「違法録画物」を専門的に捜査する機関「109常務(サンム)」は、普及が著しい携帯電話やスマートフォンのメモリに「違法ファイル」が記録されていると見て集中的に捜査を行っている。これに対抗する庶民たちの秘密兵器が「ノートテル」という独特の機器だ。
ノートテルは、中国製の携帯型メディアプレーヤーで、DVD、VCD、USBメモリを挿入すれば、世界中のドラマ、映画、バラエティが楽しめるまさに「夢の箱」だ。値段も、1台400~600人民元(約6750~1万円)と手頃だ。これに加えて、ファイルを共有するために必要なUSBメモリ(1個50元、約845円)、停電の時にもノートテルが使える中国製のバッテリー(1個100元、1690円)が必須アイテムとなる。
韓流ドラマだけでなく、様々な違法録画物は、ノートテルやメモリなどを通じて、平壌などの大都市だけでなく、地方の農村にも広がっている。情報筋によると、当局の取り締まりのやり口は、見え見えなので、誰も気にかけない。
ポルノが誘発
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真そもそも、こうした「違法録画物」は、金正日体制下から北朝鮮の地下マーケットを通じて、急速に流通が拡大してきた。年々、当局の取締は強化されており、以前ほど大っぴらに視聴できなくなっているが、北朝鮮の庶民たちにとって一度見始めると「やめられない、とまらない」裏コンテンツだ。
さらに、違法録画物のなかに含まれる韓流ポルノが、北朝鮮社会に衝撃を与えた事件を誘発している。
北朝鮮でも、青少年たちが、親の目を盗んでこっそりポルノビデオを見るケースはあった。これだけなら「北朝鮮の青少年たちもポルノを見たい欲求には勝てない」と笑ってすませられる。しかし、過去には、その内容を真似て、野外で性行為、つまり「青姦事件」を引き起こし、北朝鮮社会に衝撃を与えていた。
(参考記事:北朝鮮、「中学生青姦事件」に衝撃広がる…韓流ポルノの影響か )また、今年の3月中旬には、労働党大会を前にして「70日戦闘」という大増産運動が進められる最中にもかかわらず、ポルノビデオを見ながら乱交パーティーに及んでいた男性とその知人たちが逮捕される事件が発生した。
事件を知らせてくれた北朝鮮国内の取材協力者によると、裸になった3組の男女が男性の自宅の一室でビデオの内容を真似て行為に没頭していた所を当局に踏み込まれ、現場でお縄となったという。
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「青姦」や「乱交」は、いささかヤリ過ぎかもしれないが、北朝鮮人も「普通の人々」であり、性に対する欲求を国家が徹底的に取り締まることは不可能だ。ポルノに関する事件も、娯楽を認めず、徹底的に情報を遮断する金正恩体制に対する庶民たちの抵抗という見方は少々大げさだろうか。