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戦車部品をリンゴ箱に…北朝鮮の核開発を支援、中国「女性富豪」の経歴

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中国当局は、北朝鮮に核開発関連物資を含む戦略物資を輸出していた容疑で中堅企業グループの遼寧鴻祥集団に対して調査を行っているが、オーナーの馬暁紅氏は今月初めに逮捕され、10日以上取り調べを受けていることが明らかになった。

中国のデイリーNK対北朝鮮情報筋によると、同社は中国税関の検査を逃れるために、戦車のバッテリーの極板や金属材料をリンゴ箱に詰める手法で大量に輸出していた疑いが持たれている。同社は、制裁で青息吐息の北朝鮮の足元を見て、武器製造設備1台に1000万元(約1億5400万円)もの高値をふっかけていた。

さらに別の情報筋が米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、同社は脱税、マネーロンダリング、偽造紙幣や麻薬取引にも関与していたとのことだ。

ショップ店員からサクセス

中国における対北朝鮮ビジネスの第一人者の一人、馬暁紅氏はいかなる人物なのだろうか。

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今年43歳の馬氏は、丹東のショッピングモールの店員から貿易会社のマネージャーへとのし上がった。対北朝鮮ビジネスに進出し、原油を売った対価をくず鉄で受け取るビジネスモデルで富を築いた。

2000年には遼寧鴻祥集団を設立。当局の許可を得て、アパレル製品から建築資材、化学製品など様々な商品の輸出入を行うようになった。

中国政府国務院直属の中国外文局が運営するニュースサイト、中国網は2006年10月の記事で彼女のことをこのように評している。

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「今年34歳(当時)の女富豪、馬暁紅は丹東で最も成功した中朝貿易業者だ。この一日だけで彼女は2000トンもの重油を北朝鮮に輸出した。」

2011年にはグループ企業として丹東鴻祥実業発展有限公司を設立。

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貨物輸送、船舶輸送、レストラン業、旅行業などに進出し、現在の従業員は680人を数える。瀋陽の北朝鮮系ホテル「七宝山ホテル」や、丹東の北朝鮮レストラン「柳京食堂」を経営していることでも知られている。

中朝関係が冷え切っている中で、対北朝鮮ビジネスを大々的に展開できた裏に、丹東市や遼寧省との太いパイプがあったことは想像に難くない。

実際、馬氏は2011年に社会の発展に貢献した女性企業人を選ぶ「第3回丹東市十大女傑」に、2013年には遼寧省の人民代表大会の代表(地方議会の議員)にも選出されるなど、役人との癒着ぶりを伺わせる出来事も起きていた。

「習VS李」が影響か

前述の情報筋もこの点について触れている。

「馬氏は取り調べの過程で、この件に関連している丹東市の公共機関の幹部数十人の名前を供述している。彼らも無事ではいられないだろう。また、密輸を見逃していた丹東税関の幹部も大挙、交替させられるだろう。取り調べの対象者は30人で、その成り行きに中央政府は大いに注目している」

そんな彼女のサクセスストーリーが突如として終わりを告げた。

中国当局は今月、遼寧省人民代表大会における全国人民代表大会の代表(国会議員)を選ぶ選挙で、買収行為に関与したとして、全体の約7割にあたる454人に対して資格停止の処分を下したが、その中に馬氏が含まれていたのだ。

議員失職に続き、「企業として復活できないほどの重大経済犯罪」(情報筋)の疑いが持たれ逮捕された馬氏。命運は完全に尽きたと言っても過言ではないだろう。

今回の摘発について、中国共産党の内部で行われている権力闘争が影響しているとの指摘もある。

習近平国家主席が、対立関係にある共青団派の李克強首相がかつて党書記を務めた遼寧省に狙いを定め、汚職一掃や対北朝鮮制裁の履行の徹底などを名目に大々的な摘発を行い、李首相の息のかかった人物を一掃しようとしているというのだ。

北朝鮮最大のビジネスパートナーであり、問題が生じると北朝鮮をさらに追い込むことになることを十分に知りながらも摘発に乗り出した中国当局。遼寧鴻祥集団をスケープゴートにして国際社会に、制裁履行のやる気があるところを見せつけようとしているのではとの指摘もある。

(関連記事:中国遼寧省の企業、北の核開発支援に関与か…取引5億ドル超、米中当局が捜査

デイリーNKジャパンが入手した鴻祥集団の広報誌「鴻祥記」の表紙を飾るオーナーの馬暁紅氏。(画像:デイリーNKジャパン)