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ねらわれた女子大生…北朝鮮「人身売買」の実態

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北朝鮮で行われている反人道的な犯罪について、金正恩党委員長ら国家の指導部にその責任を問うべきとの声が高まっている。韓国のソウルには国連の傘下機関として人権事務所が設置され、北朝鮮の人権状況を監視し、被害者の証言を記録している。

韓国政府も今年になって成立・施行された北朝鮮人権法に基づき、北朝鮮人権記録センターを設立。北朝鮮の指導部に人権侵害の責任を問うための法的根拠を整理しようとしている。

こうした動きを受けて、韓国の民間団体が運営する対北短波ラジオ「国民統一放送」は、独自に人権侵害被害者の証言の掘り起こしを行い、その証言を北朝鮮に向け発信している。

その証言者のひとりが、脱北女性のコ・ジウンさんだ。

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両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の出身で、1990年代末、28歳のときに脱北したコさんは、中国で2度にわたり人身売買の被害に遭った。コさんの話を聞こう。

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問 前回はコさんが、2度目の人身売買被害に遭ったところまでの話を聞きました。そのような経緯で中国人男性と暮らすようになり、たいへんだったのはどのようなことですか。

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答 ひとつは貧しさでした。人身売買で北朝鮮女性と結婚する中国の男性は、経済的に苦しい人たちでした。石鹸ひとつ買えないほどです。

問 北朝鮮から来たことについて、村の人々の視線はどうでしたか?

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答 概ね同情的だったと思います。北朝鮮にいたら飢え死にしてしまうだろう、よく来たと。ただ、貧しい国から来たということで、下に見られたこともありました。

問 同じ村に別の脱北女性がいたということですが、交流はありましたか。

答 もちろんです。互いに心の支えになりました。

容赦ない暴力

問 しかし、脱北女性が中国の田舎に売られた場合、逃げてしまうことを恐れ、中国人の夫は脱北者どうしの交流を許さないとも聞きます。

答 それは事実です。脱北者の女性同士で話し込んでしまったりすると、夫たちが探しに来て、その場で暴力を振るわれるのです。最初の頃は、家族の安全のためにそうするのだと思っていました。中国の公安が恐ろしいので、うろつき回ってはいけないと警告してくれているのだと考えたのです。ところが、そうではありませんでした。ある女性の夫は、酒を飲むたびに彼女を殴るのです。それも、ささくれだった薪のような棒で殴るので、あちこち皮膚が裂けて血だらけになります。その夫は、妻の悲鳴を聞いた隣人が止めに入って来られないよう、戸にカギをかけ明かりを消して暴力を振るいました。ある夜はあまりに悲鳴が激しいので、村長が窓ガラスを蹴破って乗り込み、どうにか彼女を助けました。彼女は結局、夫の暴力に耐えかねてどこかへ逃げて行きました。

収容所の恐怖

問 コさんはいつ、韓国に来ようと思ったのですか。

答 実際のところ、私は脱北したその瞬間から韓国行を考えていました。でも、ルートがみつからないのです。そのうち中国で子供を生み、育てるうちに、韓国行がより遠ざかってしまいました。子供を連れて韓国を目指し、その途中で捕まり強制送還されようものなら、親子ともども政治犯収容所に送られてしまいます。それが恐ろしくて仕方ありませんでした。

しかしその後、私が白内障を患い、手術を受けなければならなくなりました。中国では手術の際に、身分証の提示を求められます。私には身分証がなく、保険もありませんでした。もはや躊躇することは許されず、韓国へ行って韓国国籍を取る必要が生じたのです。

問 コさんはそのようにして2016年まで中国で暮らし、韓国へ来たわけですね。ところで、コさんが初めて脱北した1990年代後半はとくに人身売買が多かったと聞いていますが、最近はどのような状況でしょうか?

答 今後も、人身売買が簡単になくなるとは思えません。最近は、中国からすぐに韓国へやってくる脱北女性が多いので、人身売買が減ったように見えますが、実際にはそうではないのです。昨年、韓国へ来た脱北者から聞いた話では、勉強ができ英語も上手い北朝鮮の女子大生に、中国へ行って勉強をして、おカネも儲けてみてはとそそのかす人があったようです。それも人身売買を目的としたもので、本人にまったくその気はなくとも、騙されて売られてしまうわけです。

中国当局が北朝鮮に同調して脱北者を保護せず、このような犯罪を放置しているのは、それ自体が大きな不正であると言えるのではないでしょうか。