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めぐみさん拉致から39年、試される安倍首相の「突破力」

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新潟市内で横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されてから、15日で39年となった。中学校からの帰宅途中に拉致されためぐみさんは、当時13歳だった。生存していれば現在52歳。実に人生の4分の3にもなる期間、北朝鮮に自由を奪われているのである。

安倍政権を名指しで非難

北朝鮮の工作員が、海岸から極秘に侵入し、誰にも悟られずに一般市民を拉致して連れて行く。拉致された本人には何ら落ち度はない。残された家族は北朝鮮に拉致されたという事実すら知りようもなく、何が何だかわからない状況のなかで苦しみ続ける。

1990年代に入り、めぐみさんをはじめとする日本人拉致問題は、一部のジャーナリストやNGOなどによって徐々に明らかになる。そして2002年、故金正日総書記は小泉純一郎首相と会談し日本人拉致を認めた。

(参考記事:検証「日本人拉致問題」を振り返る

この時から「北朝鮮による日本人拉致問題」は、日本政府が責任を持って解決すべき重要課題となる。また外交において、よほどのことがない限り非を認めない北朝鮮が日本人拉致を認めたことで、その後の解決を期待させることになった。

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しかしこの14年間、多少の前進はあったものの全面解決にはほど遠い。それだけでなく、時が経てば経つほどますまず解決の糸口が細くなりつつある。

それでも2014年に両国の間でストックホルム合意が交わされた。当時、安倍首相は興奮した面持ちで「全面解決に向けた第一歩となることを期待しています」と語るなど、周囲に期待を抱かせた。しかし、再調査の中身や合意自体の解釈をめぐって、両国の溝は深まる。さらに金正恩体制が強行した核実験とミサイル発射実権をめぐり日本政府は追加制裁措置を決定。

これに反発した北朝鮮は、「重大な悪結果を生じさせた全責任は、安倍政権が負わなければならない」と安倍政権を名指しで非難しながら、「拉致問題は解決済み」との立場を示す。そして、従来の頑なな姿勢に戻った。

(参考記事:北朝鮮、ストックホルム合意を破棄か…「拉致被害者調査」の全面中止

安倍晋三首相は今年9月17日に開かれた「国民大集会」で「拉致問題の解決なくして日朝関係の改善はありません。そして、全ての拉致被害者の帰国や真相究明等がなされない限り、拉致問題が解決したとは決して言えない」と主張した。従来通りのものであり、何か目新しい策や具体的な策が打ち出されたわけではない。

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いずれにせよ、拉致問題も含め日朝交渉は今後より厳しくなることは覚悟しておかなければならいようだ。

まず、金正恩体制は核実験とミサイル発射を継続する意思を明確にしている。拉致被害者の家族からは、政府に「核問題と切り離して拉致を最重要課題として取り組んでいただきたい」と求める声もある。その切実な思いは理解できるが、日本政府は北朝鮮の国家的な人権侵害を国連で告発してきた立場がある。

そうした経緯をないがしろにして「他の人権問題や核・ミサイル問題は関係ありません。日本政府は、日本人拉致問題だけに取り組みます」では通用しない状況になっているのだ。日頃から訴えてきた「国際連帯をもって拉致を解決する」というスローガンを自ら空証文にしてしまうだろう。なによりも、北朝鮮側から足下を見られ、国際連帯の隙を突かれる可能性が高い。

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また、次のアメリカ大統領に決まったドナルド・トランプ氏の対北朝鮮政策は、不透明感が強い。さらに、北朝鮮に対して強硬姿勢を貫いてきた韓国の朴槿恵大統領は崔順実ゲートで窮地におちいり、しばらくは国内問題に注力せざるをえない。日本が頼りにしてきた対北包囲網は、一時的に弱まることが考えられる。

こうした中、北朝鮮の姿勢を転換させることは並大抵ではないことを踏まえたうえで、拉致問題の糸口を探る必要がある。少なくとも、集会などで「やる気」を見せて主張しているだけで解決するような問題ではない。

(参考記事:新聞が報じない、安倍政権が日本人拉致問題を解決できない理由

冷厳な国際政治の中で、日本人拉致問題の解決は、核・ミサイル問題とその他の人権問題の「向こう側」に置かれてしまっているのが今の現実だ。それを再び、ほかの問題の「手前」に引き寄せるのは、もはや安倍首相の個人的な突破力しかないのではないか。前述したような理由から、米韓などと意見調整をしていたら、何も動かすことはできない。

小泉純一郎元首相のように、北朝鮮に乗り込んで、たとえ全員でなくとも拉致被害者を連れ帰ってくる――アメリカや韓国から何を言われようが、これを「やり遂げて見せる」との宣言を、まずは安倍首相から聞いてみたい。