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金正恩氏に「忠誠」を誓う在日組織の本当の問題点

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21日付の産経新聞(電子版)によれば、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が最近、「金正恩元帥様に無限の栄光を抱かせるため、朝鮮総連の反対勢力に総攻撃・総決死戦を繰り広げ勝利を勝ち取ろう」との方針を傘下団体に示しているという。

ノンポリ化で公安も当惑

5月上旬の朝鮮労働党第7回大会に代表を送ったのを機に、朝鮮総連が何らかの新たな活動を始めたようだというのは、筆者もすでに指摘していることだ。

ただ、朝鮮総連について何の予備知識もない大多数の日本人が産経の記事を読んだらどう感じるか、一抹の不安を感じずにいられない部分もある。

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朝鮮総連はおそらく、産経の書いた通り「総攻撃・総決死戦」という言葉を用いて、内部の引き締めを図っているのだろう。字面だけ見れば、まるで武装テロ集団のスローガンみたいだ。

しかし実際のところ、朝鮮総連はすでに、そのような戦闘的な集団ではなくなっている。過激な文言は、組織に勢いのあった1960~70年代からの惰性で使っているだけだろう。

少なくとも私は、本気で「総決死戦」に臨めるような総連関係者とは1人もあったことはない。

そのことは、公安の朝鮮総連に対する監視活動の中でも明らかになっている。

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朝鮮総連の若年層がノンポリ化してしまったために、冷戦時代に作られた公安警察のマニュアルが、役に立たなくなっているのが実態なのだ。

(参考記事:【対北情報戦の内幕】総連捜査の深層…警察はなぜ公安調査庁に負けたのか

政界人脈づくりも

私は、朝鮮総連に問題がないとは思っていない。むしろその逆だ(詳細後述)。それを隠していないから、朝鮮総連から大いに嫌われていることも自覚している。

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それでも、朝鮮総連の古臭い言葉尻をとらえて、大げさに報道する産経新聞の姿勢には違和感がある。

同紙は5月5日、「正恩第1書記に忠誠を誓う朝鮮総連傘下の青年団体『在日本朝鮮青年同盟(朝青)』に(朝鮮大学校の)卒業生を強制的に就職させていた」と報じているが、これも同様だ。

朝鮮総連の運営する朝鮮大学校の学生たちの大多数は、就職先の選択を組織に預けることを前提に進学しているのであって、「強制的に就職」などということにニュースの価値などないのだ。

産経の記者だって、本当はそれぐらいことは分かっているはずだ。

ちなみに、朝鮮学校や朝鮮大学校の内実についてはライター・安宿緑氏の著書『北の三叉路』(双葉社)に非常にリアルに描かれていて面白いので、興味のある読者はぜひ読んでみてほしい。

前述したように、私も朝鮮総連には大いに問題があると思っている。北朝鮮の工作機関・225局などから指示を受け、韓国での地下組織づくりや、日本の政界人脈構築に関わっているメンバーらもいるようだが、日本は言論の自由と結社の自由が保障された国だ。それさえも逸脱するような動きがあれば、取り締まりを受けるのは仕方なかろう。

(参考記事:韓国でつかまった北朝鮮スパイが「東京多摩地区」で会っていた人物とは!?
(参考記事:直撃肉声レポート…北朝鮮「工作員」関西弁でかく語りき

だが、より大きな問題は、人権に対する姿勢だ。

たとえば日本人拉致問題だ。朝鮮総連はどうして、朝鮮学校などで拉致被害者に寄り添った人権教育をしたり、痛みを分かち合ったりする活動ができないのか。

在日朝鮮人は、20世紀において朝鮮半島が日本帝国主義に蹂躙される過程で発生した。ならば、北朝鮮の国家によりいわれもなく生活を蹂躙された拉致被害者、そしてその家族の痛みを知ることで、得るものはあれど失うものなどないはずだ。

問題が起きるとすれば、朝鮮総連の上層部が、金正恩氏から「お叱り」を受ける程度のことだろう。それが怖くて杓子定規に振る舞う朝鮮総連に対しては、金正日総書記ですらいら立ちを募らせ、「偽装転向」を指示していたとも言われる。

仮に朝鮮総連が、本気で金正恩体制の役に立ちたいのだとしても、日本社会と「常識」を共有することなしには何もできまい。それができないようなら、朝鮮総連は毒にも薬にもならぬ存在として衰退していくだけだ。