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女性接待員たちが外貨を稼ぐ…「北朝鮮レストラン」の舞台裏(上)

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米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると最近、中国のレストランで働く北朝鮮女性が、忽然と姿を消す事件が頻発しているという。

同様の報道は過去にもあった。たとえば毎日新聞は2013年2月19日、北京発の特派員電で北朝鮮女性の「失踪事件」について報じている。

「中朝貿易関係者ら」を情報源としたこの毎日の記事によれば、失踪したのは当時21歳の女性従業員。河南省のレストランで数ヶ月間、勤務していた。

女性はレストランの宿舎を真夜中に抜け出して姿を消しており、監視カメラには1人で外に出る様子が撮影されていたという。

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記事はまた、女性は中国語をほとんど話せず、パスポートも店側に預けたままで、「脱北ブローカーの中国朝鮮族の男女が関与しているとみられる」とも述べている。

一読した限りでは、とくにどうということもない記事だ。北朝鮮からは日々、多くの住民が脱出している。若い女性が海外勤務になったのを幸いに、自由の世界へ向かって羽ばたいたとしても、何ら不自然なことではない。

しかしそれも、「北朝鮮レストランの舞台裏」を知ってみれば、やや違った見え方がしてくる。

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海外のレストランに勤務する女性従業員らは、エリート家庭の生まれ育ちであるのが普通であり、困窮の果てに故郷を離れる従来の脱北者像とはかけ離れた存在と言えるからだ。

海外で運営されている北朝鮮レストランがどれだけあるか、当の北朝鮮当局以外に正確なデータは存在しないと思われる。新規開店や閉店、統廃合がけっこう頻繁に行われており、中には一定期間の休業後に再開したり、そのまま自然消滅したりするケースもあるからだ。

それでも、中国やタイ、ベトナム、ラオス、カンボジアなどで合せて数十軒が営業しているのは確かだ。圧倒的に多いのはやはり中国で、北京や北朝鮮に近い瀋陽には10軒前後、上海や大連、延辺朝鮮族自治州の州都・延吉、中朝国境の町である丹東などにも数軒ずつある。

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このうち丹東での営業実態について、現地を取材で訪れた際に関係者の話を聞くことができた。解説してくれたのは、中国資本と北朝鮮企業の橋渡しをしている中国朝鮮族の貿易業者である。

「北朝鮮レストランは、地元資本と北朝鮮側との合弁で運営されているのが普通ですね。地元資本側が店舗や食材の確保などを行い、北朝鮮側がスタッフを派遣している。つまりは相互に現物出資をして、店の権利が半々になるように設定されているんです。もちろん、利益も折半です。

北朝鮮側の事業主体は、国家が一元的にやっているというよりは、政府機関や様々な事業体(大規模な工場や貿易会社)が、それぞれ国の許可を得て別々にやっているみたいですよ。本国に、そうした活動を統括する役所があるのかもしれませんが、そこは私たちにはわかりません。

ともかく、同じ丹東市内で営業している店の中にも、親会社が同じ所と違う所があるんです」

駐車場にはベンツやポルシェが

北朝鮮の政府機関や事業体の多くは国家の財政難から独立採算を余儀なくされているため、このようにして外貨取得を目的とする事業展開をすることは大いにあり得る話だ。

では、肝心の商売の方はどうか。

丹東の人気店の場合、観光シーズンや連休ともなれば200―300席もある店が客でいっぱいになることも多く、かなりの売り上げがあると思われる。

ディナー時の客単価は普通に食べても日本円で2000~3000円ぐらい。気前よく飲み食いすれば7000~8000円ぐらいはいく。物価の安い国でこれだけの売り上げを得ていれば、利益水準はかなり高いだろう。

丹東でも最も客入りの良さそうな店の前には、毎日のようにベンツやポルシェなどの高級車が停まっていた。

「丹東では、北朝鮮レストランの主な顧客は国内(漢族)の観光客ですが、人気店には地元の金持ちもよく足を運びます。最高級店ではないのだけれど、味は上品だと言われていますね」(前出・朝鮮族の貿易業者)

リーマン・ショックで打撃

一方、東南アジアで営業している北朝鮮レストランの場合、主なターゲットは韓国人ツアー客だと言われる。北朝鮮レストランでの食事を「定番コース」として組み込んでいる旅行社も多く、店側もそれを見込んでいるのか、広々とした作りになっている。

ただ、08年10月の「リーマン・ショック」直後には、そうした営業戦略があだとなったこともあった。ウォンの為替レートが急落し、韓国人の海外旅行が一時的に縮小。閑古鳥が鳴き、撤退や休業を余儀なくされる店が相次いだのだ。

現地の平均的な飲食店に比べ、かなり強気な価格設定の北朝鮮レストランは、景気が少し悪くなっただけで敬遠されるリスクがある。それは現地の人々だけでなく、「手軽な旅」を楽しみに着ている海外旅行客に関しても言えることだ。

それでも、北朝鮮レストランがしぶとく生きながらえているのは、ひとえに「接待員」と呼ばれる女性従業員たちの個性的なキャラクターと奮闘があればこそだ。(つづく)

(取材・文/ジャーナリスト 李策)

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