北朝鮮は4日、15時30分からの特別重大報道を通して、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に成功したと伝えた。北朝鮮の主張通りICBMの開発に成功したのなら、米国にとって北朝鮮の脅威はますます高まることになる。
吹き飛んだ韓国軍兵士
北朝鮮の朝鮮中央テレビは、特別重大報道で北西部の発射場からICBMの「火星14」型を発射し、成功したと発表した。ミサイルは高度2802キロに達し、933キロを飛行。日本海上の目標に到達し「成功」と見なされたという。北朝鮮メディアによると、金正恩党委員長が発射を現地で観察し、その成功を世界に荘厳に宣言したとのことだ。
北朝鮮は、過去にも特別重大報道で第4次核実験(2016年1月6日)の成功や人工衛星の打ち上げ成功(2016年2月7日)を明らかにしていた。そして、今回はICBMの発射と成功だった。金正恩氏は、核実験こそ行っていないが、米国に対して一歩も引かない姿勢をアピールした形だ。
北朝鮮は、今年4月から5月にかけて、ミサイルを連続して発射し、米朝対立は深刻な状況に陥った。とりわけ4月は、米トランプ政権がシリアに対するミサイル攻撃に踏み切っていたこともあり、「米国が北朝鮮攻撃に踏み切るのも、絶対にあり得ないとは言えない」と言われた。そして、いつしか「米国が北朝鮮を攻撃するXデーはいつか」的な報道が加熱し「危機」が独り歩きした。
(参考記事:米軍の「先制攻撃」を予言!? 金正恩氏が恐れる「影のCIA」報告書)人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真
ただし、冷静に状況を見た場合、米国が事実上の核保有国である北朝鮮を先制攻撃すれば、米国本土はともかく同盟国の日韓が核の報復を受ける可能性があり、あまりにもリスクが高すぎる。こうしたことから、筆者は米国が北朝鮮を先制攻撃するのは困難だろうという見方を示していた。
ちなみに、北朝鮮の地雷が韓国軍兵士を吹き飛ばした事件が発端となって発生した2015年8月の軍事危機の方が、状況的にはずっと危なかったと思われる。
(参考記事:【動画】吹き飛ぶ韓国軍兵士…北朝鮮の地雷が爆発する瞬間)一方、北朝鮮は6月8日に地対艦ミサイルを発射して以後、ミサイル発射をパタッとやめる。しかしそれから約1ヶ月目となる今日、米国が最も脅威と見なすICBMの発射実験を強行し、成功したと主張している。
金正恩氏の父・金正日総書記は生前、ICBMと潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、そして韓国のインフラを壊滅させられるサイバー戦能力を最も欲しがったという。金正恩氏は着実に、これらの「危険なオモチャ」を手に入れているように見える。彼は次に、いったいどんなものに食指を伸ばすのだろうか。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真ICBM発射のタイミングだが、先週に行われた米韓首脳会談に対する反発の意味があるのだろうか。韓国の文在寅大統領とトランプ米大統領は先月30日、ワシントンで初会談し、共同声明を発表。声明では「米韓同盟の強化」と「対北朝鮮政策での連携」が盛り込まれた。
このなかで、米韓は北朝鮮の核問題の解決を最優先させ、「最大の圧力」をかけることを確認した。しかし北朝鮮の国営メディアは、頻繁に「核を放棄することはありえない」と主張している。現時点で、北朝鮮と米韓の妥協点は一切見出せていない。その一方で、トランプ氏は5月に明らかにした対北朝鮮政策の4大方針で「北朝鮮を核保有国として認めない」としながら「北朝鮮の政権交代を推進しない」とした。また、「最終的には対話で問題を解決する」と述べた。
しかし、金正恩氏はトランプ氏が打ち出した対北朝鮮政策を一蹴するかのように、今回ICBM発射に踏み切った。表向きは4月より収まったかのように見えた米朝対立だが、ICBM発射でまたもや緊張するのは避けられない。はたして今回の対立はいつものようにチキンレースになるのだろうか。それとも、これまでになかった展開を見せるのだろうか。米朝の動きにまたもや目が離せなくなってきた。
(参考記事:「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民のキツい本音)