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金正恩氏は「人道に対する罪」で破滅の瀬戸際にある

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北朝鮮の人権問題を担当する国連のダルスマン特別報告者が、金正恩第1書記に対して「人道に対する罪」で調査する可能性があることを公式に通知するよう国連人権理事会に求める報告書をまとめた。

「こんなはずではなかった」

「人道に対する罪」は、戦時・平時にかかわらず、一般人に対してなされた殺戮、殲滅、奴隷的虐使、追放その他の非人道的行為、または政治的・人種的もしくは宗教的理由に基づく迫害行為について問われる国際法上の犯罪だ。

これ以上ないほどの恐ろしい罪と言える。連想される名前はアドルフ・ヒトラー、ヨシフ・スターリン、ポル・ポトあたりだろうか。記憶に新しいところではスロボダン・ミロシェビッチ。いずれの人物も、「残酷な独裁者」として悪名が高い。

そしてここに、金正恩氏の名前が加えられようとしている。しかし、まだ30代の半ばでしかない彼が、いつの間にこれほどの罪を犯したのか。

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実際のところ、彼が問われている罪のほとんどは彼の祖父(金日成)と父親(金正日)によって重ねられたものだ。彼らは政敵や反対派を血の粛清で葬り去ることによって、あるいは政治犯収容所に閉じ込めることによって君臨してきた。

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こうした歴史は、正恩氏にとっては「負の遺産」そのものだ。まったくとんでもないものを押し付けられたものである。

とはいえ、もはや正恩氏にも罪なしとは言えない。彼が最高指導者となって以降も、幹部や一般国民の公開処刑は行われており、政治犯収容所の運営も続けられている。

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一般国民が置かれた人権状況も深刻だ。

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そして、正恩氏が核開発やミサイル発射を続ける裏にも、間違いなく人権問題が存在する。なぜなら「人道に対する罪」が、北朝鮮の体制が望んできたものすべてをぶち壊しにしようとしているからだ。核とミサイルを材料にいくら取引を試みても、まともな国(そして企業)は“ヒトラー”と商売などしない。

たとえ豊富な地下資源と勤勉な労働力があろうと、たとえ観光地としての可能性をアピールしようと、その裏に「人道に対する罪」が存在する限り、「反人道的国家」との商売は躊躇される。これまで自ら望んで鎖国体制を敷いてきた北朝鮮は、国を開きたくとも開けない闇の中に封じ込められてしまうのだ。

正恩氏が「人道に対する罪」から逃れるために、やるべきことはひとつしかない。いますぐ政治犯収容所を閉鎖して、すべての罪を祖父と父になすりつけ、断罪するのだ。

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しかしそこでまた、難題にぶち当たる。祖父と父の権威に頼らずに、彼に何ができるのかという問題だ。もしかすると正恩氏にも、「こんなはずではなかった」と後悔した瞬間があったのではないか。祖父と父は、自分に指導者としてのレールを敷いてくれたはずだった。ところが、その「功績」がいまや両刃の剣だ。

早い話、正恩氏はトランプの「ババ」を引かされたのだ。

祖父も父も、独裁者として最期を迎え、「王の間」で天寿をまっとうできた。一方、正恩氏にはおそらく、これからも数十年もの人生が残されている。

「人道に対する罪」を背負いながら独裁者としてその年月を過ごす術を、彼が見つけられるとはとうてい思えない。結局のところ、金正恩体制は、祖父と父から押し付けられた「負の遺産」とともに、破滅するしかないのではないか。

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