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セクハラ・事故死・暴言・リストラ…脱北者を搾取していた韓国の「偽善会社」

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 ※この記事には、加害者の被害者に対するセクシュアル・ハラスメントの具体的な言動が含まれています。

自由な暮らしや豊富な食べ物を求めて、あるいは迫害を逃れて北朝鮮から脱出し、韓国入りした脱北者の数は2016年末現在で3万208人に上る。ところが、その多くが貧困や差別に苦しめられている。

脱北者を含む社会的弱者に雇用の機会を与えるために設立された韓国企業の、脱北者に対するひどい扱いが明らかになった。

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この企業は、韓国最大の製鉄会社ポスコが設立した松島(ソンド)SE。ポスコのウェブサイトには次のように説明されている。

「松島SEは、脱北者など雇用脆弱階層に安定的な職場を提供するために、仁川市の松島国際業務団地内に設立した自立型社会的企業で、グローバルR&Dセンター、ポスコ建設など、仁川地域のポスコファミリーの社屋の清掃と駐車管理を行なっています」

「バイアグラ飲ませろ」

韓国のハンギョレ新聞と月曜新聞によると、同社の常任理事を務めるA氏は、昨年4月から5月にかけて、脱北者の女性従業員のB氏に対して、セクシュアル・ハラスメントを行なっていた。

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「男にどこまでスキンシップするのか?」 「取引先はどうやって開拓したんだ?枕営業か?」 「山には、口紅を濃く塗った女が立っていて、男を誘惑する。君の唇は強烈に見えるが、誰を誘惑しようとしているのか?」 「ニョロニョロと動く虫が精力にいいそうだ。ヌエグラを知っているか。バイアグラのような精力剤だ。夫に飲ませて、どれぐらい精力が強くなったか確認して報告しろ」

B氏は「夜まで残業していたら、部屋には私とA氏だけになった。するとA氏が近寄ってきて『男とはどこまでスキンシップしたんだ?』と声をかけられた」と、当時の状況を語った。

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B氏は、女性労働法律支援センターに助けを求め、支援を受けて昨年8月、国家人権委員会(以下、人権委)に「性的羞恥心を感じた」とA氏を告発した。

これに対しポスコ関係者は「松島SEの株式は仁川YWCAに寄付した、我々とは無関係な会社の話だ」と述べている。

たしかに同社の株式はYWCAに寄付され、現在のCEOは仁川YWCAのキム・ヨンオク会長が勤めている。しかし、実質的な経営はポスコ出身のA氏が行っている。

死者に暴言

松島SEの取締役会は昨年9月、人権委の決定が下されるまでA氏に対して職務停止処分を下した。ところが、A氏が強く反発したために、処分は取り消された。

B氏は、「加害者を5ヶ月も放置し、孤立させられ、精神的な衝撃を受け、治療を受けている」と述べた。また、仁川YWCAの関係者は「A氏は社員に対して『YWCAが経営権を握れば会社が潰れる』『そんなことにならないように、YWCA会長に1日2回携帯メールを送れ』と指示を下した。会長は、大量のメールに悩まされている」と述べた。

人権委は非公開で行った調査の結果、A氏の言動について「(被害者が)性的屈辱感、または嫌悪感を感じる行為と判断する」とし、松島SEに対して「セクハラ発生を予防する責任のある経営責任者が、むしろセクハラを繰り返し行なったことは、責任が重い」と指摘。A氏に対して人権委の特別人権教育を受けることを勧告する必要があると明らかにした。

A氏の疑惑は、セクハラだけにとどまらない。労災事故で死亡した従業員に暴言を吐いていたのだ。

地元の仁川日報によると、昨年8月13日の午前8時半頃、脱北者の従業員D氏は、長さ3メートルのワイパーで清掃を行っていたところ、バランスを崩して、エスカレーターと窓の隙間から14メートル下に転落した。病院に運ばれたものの、死亡した。

D氏は、咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)市の医大を卒業後、産婦人科の医師として働いていた。肝臓病と高血圧に苦しむ妻を救うために、娘を連れて3人で脱北、2006年に韓国にやって来た。この会社には2010年から勤務し、140万ウォンの月給を妻の治療費に当てていた。

この事故をきっかけに、松島SEでは従業員に一切の安全装備が与えられていなかったことが明らかになった。

A氏は遺族に謝罪したが、遺族に対して「謝罪を受ける姿勢がなっていない」などと暴言を吐いた。

遺族は同社の謝罪、真相解明、責任者の処罰などを要求し、告別式を11日も延期した。ポスコはこの件に関し「別の企業なので関係がない」と繰り返していた。

ところが、野党である「共に民主党」の仁川支部が対策委員会を立ち上げて、国会議員が調査に乗り出すや態度を一変し、遺族の要求を受け入れた。

一連のセクハラは、こうした経過の最中に起きたものだ。

この企業の問題は、国会でも取り上げられている。

正義党のイ・ジョンミ議員は昨年9月、国会の国政監査で、ポスコが別法人であるとしている松島SEの経営に関与し、赤字を国からの補助金15億ウォンで埋めていたにもかかわらず、従業員の年俸は1700万ウォン程度なのに、CEOは1億2000万ウォンの年俸を得ていたと指摘した。さらに、補助金の支給が終わった後は、従業員を多数クビにしていた。

元々、従業員120人のうち40人が脱北者だったが、設立から5年が経過したため、統一省と労働省からの支援金の支給が終わった。そして人件費の負担が増えることを嫌った同社はリストラを行い、現在、脱北者の従業員は24人まで減っている。