米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は先月、亡命した北朝鮮の朝鮮労働党元党幹部、李正浩(リ・ジョンホ)氏(59)のインタビューを公開した。
李氏は2014年10月に韓国に亡命し、2016年3月に米国に渡った。現在は妻と2人の子供とともにワシントンDCに住んでいる。
人間を「ミンチ」に
李氏は脱北する2014年まで、党39号室の高位幹部として、金正恩党委員長の秘密資金を造成するための外貨稼ぎに取り組んでいた。同氏の暴露した39号室の活動内容は非常に興味深いものだったが、筆者の印象に強く残ったのは、脱北の動機について語った部分だ。李氏は次のように述べている。
「私が亡命した2014年は、とても殺伐とした時期でした。張成沢氏(元国防副委員長で金正恩氏の叔父)をはじめとする高位幹部とその側近たち、そして彼らの家族たちが、幼い子供まで含めて数百人が高射銃で無残に処刑され、数千人が粛清されました。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真私の知人である高位幹部が何人も高射銃で殺され、私の子供の友人たちが政治犯収容所に送られるのを見て強いショックを受けました。私と私の家族たちは、そのような悲劇的な光景をこれ以上見たくはありませんでした。
それまでの(金日成主席、金正日総書記の)時代にも処刑や粛清はありましたが、このような前代未聞の虐殺蛮行はありませんでした。人間の尊厳を第一に考える社会主義教育を受けた私は、自分の国でこのようなことが起きるとは想像だにしていませんでした。また、その出来事を目の当たりにするまでは、自分が亡命することになろうなどとは夢にも思いませんでした」
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)高射銃とは、文字通り人間を「ミンチ」にしてしまうような武器だ。それを公開処刑で多用してきた金正恩氏の残忍さについては、これまでの報道を通じてすでに広く知られている。だが、まさか幼い子供までが、あの恐ろしい高射銃で処刑されていたとは思わなかった。
(参考記事:玄永哲氏の銃殺で使用の「高射銃」、人体が跡形もなく吹き飛び…)こうした証言から伝わるのは、金正恩氏の残忍さもさることながら、普通の人々の想像を圧倒する彼の「実行力」である。われわれが「さすがに、そこまでは」と考えることが、彼にはやれてしまうのだ。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真これは北朝鮮の核開発をどのように止めるかを考える上でも、非常に重要な問題だと言える。韓国にせよ米国にせよ、最終的には対話で核問題を解決すると言っている。しかし恐らく、普通の常識人が金正恩氏と向き合った場合、ずっと裏をかかれ続けることになりかねないのではないか。
今この瞬間にも、われわれの多くは「さすがの金正恩も、自分から核戦争を始めることはないだろう」と考えている。そしてそれを前提として、核問題の解決方法を模索している。だが、本当にそれは正しいのだろうか?
子供を処刑する指導者のメンタルなど想像できない、という人がほとんどだろうが、他方には、それをやれてしまう人物が厳然と存在する。両者の思考回路には、何らかの大きな違いがあるのではないか。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真私たちは金正恩氏について、そのように考えながら行動すべきなのかもしれない。
(参考記事:「いま米軍が撃てば金正恩たちは全滅するのに」北朝鮮庶民のキツい本音)