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「ミサイル発射、もういいかげん疲れた」漏れてきた北朝鮮国民のホンネ

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北朝鮮は、ミサイル発射実験や核実験を行うたびに、その成功を喜ぶ自国民の姿を、国営メディアを通じて全世界に配信している。だが、それはすべて演出されたものだ。

世界でも例を見ないほどの情報統制を敷き、国民が海外からの情報にアクセスできないようにしている北朝鮮だが、普通の人々の感覚は驚くほどわれわれと近い。

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理不尽な虐殺

先月28日のミサイル発射実験を受けて、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、「もういい加減に疲れた」とする北朝鮮の人々の生の声を伝えた。そこには疲労と不安が強くにじみ出ている。

北西部の慈江道(チャガンド)の情報筋によると、「住民の心中は、ミサイル発射が成功した喜びよりも、心配の方が大きい。発射を祝う軍民連歓大会に動員されたり、大会に必要な物資を供出させられたりするかもしれない。そうなれば、こき使われてクタクタになるだけではなく、なけなしのカネも、市場で商売する時間も奪われ、経済的に困窮することになるからだ」という。

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一方、幹部の中にはミサイル発射と関連して、食糧問題を心配する向きもある。今年の北朝鮮では未だに梅雨が明けておらず、長雨が続いているため、凶作になる恐れが出ている。

前出の情報筋は、「農業がダメになり、足りない食糧を海外から援助してもらおうにも、ミサイル発射のせいで多くの国が援助を渋るかもしれない」と懸念を表す。

実際、国連の世界食糧計画(WFP)が北朝鮮の子どもを対象に行なってきた栄養支援事業は、今年春に中断を余儀なくされた。国際社会が、ミサイル発射実験や核実験を続ける北朝鮮への援助のための資金提供を渋ったからだ。

これを受け北朝鮮国内では、「ミサイルと核兵器が第2の『苦難の行軍』(90年代末の大飢饉)を招きかねない」との声まで上がっているという。

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そのような不安心理の表れだろうか。市場では、収穫が始まったにもかかわわず、トウモロコシ価格が上昇に転じているもようだ。

一方、現在中国に滞在中の北朝鮮の貿易関係者は、強い表現を使って金正恩氏のやり方への疑問を表した。

「単なるミサイル発射ではなく、もはや狂気の域に達している。中国に原油を止められたらわが国は一巻の終わりだ」

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またこの関係者によれば、北朝鮮の中央の幹部が最も恐れているのは、中国が貿易統制を強化することと合わせて、米国が日本と韓国に核兵器を配備することだという。

「もし米国が日本と韓国に核兵器を配備することになれば、中国とロシアは今まで経験したことのない新たなリスクにさらされることになる。それは経済的圧迫となって北朝鮮に返ってくる」(貿易関係者)

こうした意見がわずかでも北朝鮮の政策に反映されるようになれば、北東アジアの安全保障は相当な変化を見せるはずだ。

しかし残念ながら、北朝鮮には民主主義がない。権力に対して何かを主張すれば、その内容が正しければ正しいほど権力の目の敵にされ、粛清の憂き目に遭う。「苦難の行軍」の時代には、自力で食べ物を調達しようとしただけの労働者たちが、理不尽な理由で虐殺された事件すらあった。

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