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兵士の月給はたった9円…金正恩氏の「腹ペコ軍隊」は餓死寸前

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朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士たちが裏ビジネスで小金を稼いでいるという。北朝鮮では金正日総書記の時代から、すべてにおいて軍事を優先するという「先軍政治」をスローガンに掲げてきたが、金正恩時代に入って、北朝鮮軍が弱体化していることが背景にある。

「ミンチ」にして処刑

北朝鮮軍の総兵力は120万人とされており、韓国軍(66万人)と在韓米軍(2万5千人)の合計よりも圧倒的に多い。人口2,500万人と言われる北朝鮮で、120万人の兵力を養うのは国家的にも相当な負担だ。

そのせいか金正恩党委員長は、核戦力やサイバー戦力の強化には余念が無いが、野戦軍に対してはけっこう冷たい。それは、一昨年に当時の人民武力部長(防衛相)の玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)氏でさえも、文字通り「ミンチ」にして無慈悲に処刑していることからも明らかだ。

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軍の弱体化を象徴するのが、中朝国境地帯で多発する北朝鮮軍兵士たちによる犯罪だ。飢えた兵士たちが対岸の中国に侵入し、たびたび略奪・強奪事件を起こしている。国境の中国側では、地域住民が自警団を結成して対応するほどだ。

(参考記事:独占入手!中国軍に制圧・連行される「北朝鮮脱走兵」の現場写真

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韓国国防省が発表した2014年国防統計年報によると、朝鮮人民軍の末端兵士の月給はたったの700北朝鮮ウォン(約9円)。市場で売られている、小さい器に入った子ども用の冷麺1杯分にしかならない。また、佐官級でも6000北朝鮮ウォン(約78円)に過ぎない。ちなみに、平均的な4人家族の1ヶ月の生活費は50万北朝鮮ウォン(約6500円)だ。

こうした中、北朝鮮軍の兵士たちは生き残りをかけて、「携帯ビジネス」に乗り出した。

LINEを使い

本来、北朝鮮軍の兵士、下士官は、情報漏洩を防ぐため、携帯電話の使用は許されていない。しかし、「上に政策あれば下に対策あり」のお国柄だけあって、彼らは裏ワザを使い携帯電話を入手する。

平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋によると、兵士たちはまず、親からカネを送金してもらい、ブローカーに携帯電話を注文する。ブローカーは、貧しい人にコメ10キロを渡して公民証を借り、携帯電話を調達し、それを兵士たちに高値で売りつけるという流れだ。日本で言うところの「飛ばし」の携帯である。

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かつて携帯電話を購入するには、秘密警察の国家保衛省の地域組織である保衛局、人民保安署(警察署)、そして逓信所(郵便局)の許可が必要で、手続きには1ヶ月かかっていた。しかし当局は、携帯電話の販売を増やすために、公民証(身分証明証)の提示だけでその場で買えるようにした。それでこのような調達方法を使えるようになったわけだ。

一方、平壌の建設部隊の兵士たちは、最初からビジネスを前提として、ブローカーを通さずに携帯電話を入手する。

彼らはまず、部隊の近隣に住む住民に儲かるビジネスがあると声をかけ、携帯電話を買ってもらう。それを使って、物資を地方から鉄道で取り寄せるビジネスを共同で営む。それだけではない。携帯電話を持たない兵士たちを相手に、送金ブローカーも行っている。おそらくは韓国に済む脱北者から北朝鮮にいる家族に対する送金をサポートしているのだろう。

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最近では、国外との連絡もカカオトークやLINEなどのメッセンジャーアプリを活用するケースも増えているという。

(参考記事:「LINEを使う人間はスパイ」金正恩体制が宣言)

将校の多くは、兵士向けの配給を横流しすることで生活費を確保している。そのため、兵士たちはまともな食事にありつけず、栄養失調になる者が後を絶たない。そこでこうした違法商売に乗り出すというわけだ。

また、兵役が終わった後、社会に戻っても先立つものがなくては生きていけない。そのため、現役の時から商売でせっせと生活資金を貯めておくのだ。北朝鮮当局は、兵士たちの市場への出入りを禁止したり、密輸を取り締まったりしているが、今の北朝鮮では商売をしなくては生きていけない。自分の手で現金収入を得て、市場で食べ物を買わなければ餓死してしまうからだ。

この基本的な問題が解決しない限り、兵士たちの裏ビジネスは拡大する一方だろう。