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遺体が粉々になり原型とどめず…金正恩氏の「劇団員虐殺」事件

北朝鮮女性アイドルの波乱の運命(2)

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北朝鮮の金正恩党委員長の妻は、銀河水(ウナス)管弦楽団の歌姫だった李雪主(リ・ソルチュ)氏だ。彼女が所属していた時期、銀河水管弦楽団は頻繁に公演を行い、楽団員が勲章を受けるなど、華々しい活躍ぶりを見せた。

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しかし、楽団をある悲劇が襲い、文字通り「血の雨」を浴びながらその歴史に終止符を打たれることになる。その悲劇は、創設者である金正日総書記の急逝からはじまる。

「ミンチ」にして処刑

2011年12月に金正日氏は死去し、金正恩時代が幕を開ける。翌2012年2月に銀河水管弦楽団の新春音楽会が開かれた。3月には銀河水管弦楽団が金日成勲章を受け、5月にはメーデーコンサートを行う。

しかし、公演の舞台には歌姫だった李雪主(リ・ソルチュ)の姿は見えなかった。おそらく、金正恩氏と李雪主氏は既に夫婦関係になっており、彼女は歌手としての活動から身を引いていたと見られる。

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そして2012年7月、金正恩氏の肝いりで創設された北朝鮮初のガールズグループであるモランボン楽団が衝撃的なデビューを果たす。金正恩・李雪主夫妻はデビュー公演を観覧した。

この頃から2人の関心は、モランボン楽団に移ったのだろうか。同年10、11、12月に行われた銀河水管弦楽団の公演を観覧した高級幹部は金正恩氏ではなく、最高人民会議常任委員長の金永南(キム・ヨンナム)氏だった。

そして翌2013年の夏から秋にかけて、銀河水管弦楽団の悲劇が幕を開ける。

同年7月28日に行われた「祖国解放戦争勝利60周年慶祝音楽会」の直後から、「銀河水管弦楽団が強制的に解散させられた」との未確認情報が流れた。時を同じくして北朝鮮の音楽コンテンツを扱うサイトから銀河水管弦楽団の名前がいきなり削除された。楽団が公式メディアに登場することもなくなり、解散は決定的と見られるようになる。

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しかし、2年後の2015年、意外な形で銀河水管弦楽団に注目が集まる。韓国の情報機関である国家情報院(国情院)は、同年3月に銀河水管弦楽団の総監督、40代の男性初級幹部2人、40代女性の合計4人が、国情院のスパイであるとして逮捕されたキム・グッキ氏と関係を持った罪で、平壌郊外の「美林ポル」という場所で銃殺されたと明らかにした。北朝鮮での銃殺刑は珍しくないが、メンバーらは遺体が粉々になり原型をとどめないほど凄惨な殺され方をしたと伝えられている。

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銀河水管弦楽団の解散とメンバー処刑は、ひとつの独立した事象ではない。祖父・金日成主席や父・金正日総書記よりも残忍極まりないと評される金正恩氏の恐怖政治が始まるのが、楽団解散の直後からなのだ。楽団が解散させられた2013年の12月に金正恩氏は叔父の張成沢(チャン・ソンテク)氏を無慈悲に処刑。これを皮切りに数多くの幹部が処刑される。

2015年4月、すなわち銀河水管弦楽団のメンバーが処刑された翌月には、当時の人民武力部長(防衛相)だった玄永哲氏が、文字通り人間を「ミンチ」にする高射銃で処刑された。

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銀河水管弦楽団のメンバーと玄氏の処刑。いずれも金正恩氏の恐怖政治がもたらした血の惨劇だ。楽団解散と同時に、金正恩氏の恐怖政治の幕が開けていたのである。

銀河水管弦楽団の活動時期は2009年から2013年と短命に終わった。現在、北朝鮮を代表する芸術団は先述のモランボン楽団だ。既に自身の楽団を創設した金正恩氏にしてみれば、父・金正日総書記によって創設された銀河水管弦楽団にはそれほど思い入れもなかったのだろう。

一方、楽団に所属していた李雪主氏は、既に金正恩氏の夫人の座に収まっていた。しかしだからと言って、元の所属先や元同僚たちを庇護するだけのパワーが、すぐさま備わるはずもなかった。

そして実は、銀河水管弦楽団が解散された背景には、彼女自身と関連した深刻な「スキャンダル」があったのである。

(つづく【北朝鮮女性アイドルの波乱の運命(3)】:「芸術団虐殺事件」に隠された金正恩夫人の男性スキャンダル