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金正恩氏は「大量餓死」を党大会で総括できるのか

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1980年以来、36年ぶりとなる朝鮮労働党大会の第7回大会が6日午前、平壌で開会した。そのうち詳細が伝わってくるだろうが、とりあえずの焦点は核開発、経済政策、朝鮮半島の統一政策について、金正恩氏がどのような方針を示すかだとされている。

そして、それらに劣らず重要なのが、金日成・正日政権の失政をどのように総括するか(あるいはしないのか)であると筆者は考えている。

とくに、1990年代後半の「苦難の行軍」と呼ばれる時代に対する総括は重要だ。

北朝鮮は、金日成氏による農業指導の欠陥から慢性的な食糧不足に陥っていたところ、東西冷戦の終焉により東側ブロックからの支援を失い、さらには1995年から立て続けに自然災害に見舞われ、深刻な飢饉に陥った。餓死者の数は数十万人、あるいは100万人以上とも言われている。

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この出来事は、北朝鮮社会を様々に変えた。

北朝鮮の国民経済は、今やほとんど資本主義化しているのだが、そのきっかけも「苦難の行軍」にあった。たとえば北朝鮮政府は2002年7月1日、限定的ながら経済改革を実施した。それまで非合法だったヤミ市を自由市場として公営化し、国民の個人事業を認めたのだ。「苦難の行軍」の中、食糧難で国家が配給制度を維持できなくなり、国民に自立を促さざるを得なくなったことが背景にあった。

その結果、庶民は少しずつだが私有財産を手にし、自由を楽しむようになった。自由は人々のライフスタイルの多様化、消費者ニーズの多様化につながった。

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そしてそれがまた「草の根資本主義」の発展を促している。近年、海外ドラマのDVDが闇ルートで北朝鮮国内に広まり、爆発的な人気を呼んでいるのもその結果だ。

だが、北朝鮮政府とて、この流れを指をくわえて見守っているわけではない。なし崩し的に社会変革が起きることを警戒し、規制をゆるめたり強めたりしながら庶民の行動を統制し、同時に彼らの稼ぎを取り込もうと躍起である。

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「オヤジ越え」できるのか

いずれにせよ、庶民の自律的な経済活動なしに、北朝鮮という国家は成り立たなくなっている。

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その現実と向き合うためにも、北朝鮮の社会主義制度を崩壊に至らしめた「苦難の行軍」の総括は必要なのだ。

それはとりもなおさず、正恩氏の権威の源泉である祖父と父親を批判することにもつながる。

正恩氏は父親に出来なかった党大会の開催により、「オヤジ越え」を図ったといえる。しかしそれは、単に会議を開くだけで実現できるものではないのだ。