金正恩氏が警戒する韓流の北朝鮮浸透(下)
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真韓国で開かれた平昌(ピョンチャン)冬季五輪に派遣された北朝鮮の「美女応援団」が、本国で理不尽な責め苦に遭っている。五輪中は様々な話題を振りまき、南北融和ムードを高めた功労者のはずだが、北朝鮮当局にとっては警戒すべき女性たちなのだ。
(参考記事:北朝鮮へ帰り「金日成お面」問題で叱られている美女応援団 )
北朝鮮が、海外に派遣する人に秘密警察・国家保衛省の要員を監視役として付けるのは公然の秘密だ。たとえばロシアや中東などに派遣されてきた労働者にも保衛員(秘密警察)の監視が付いており、劣悪な環境に耐えかね脱走する労働者に対して凄惨な私刑を加えたりもする。
(参考記事:アキレス腱切断、掘削機で足を潰す…北朝鮮労働者に加えられる残虐行為 )
女子大生を拷問
美女応援団も例外ではない。
選び抜かれて派遣された女性たちだが、韓国滞在中に不用意な言動をすることを防ぐため、必ず保衛員の監視が付く。彼女たちが脱北、つまり亡命する可能性もゼロとは言えない。
徹底した監視のためか、五輪期間中は大きなトラブルは起きなかった。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真それでも、北朝鮮当局が容易に彼女たちを信用することはない。韓国紙・東亜日報は、世界北朝鮮研究センターの安燦一(アン・チャンイル)所長のコメントを引用し、美女応援団がホテルに缶詰にされ、「水抜き」をされていると報じた。
安氏によると、「水抜き」とは韓国滞在中に接した社会の雰囲気と文化を洗い流す思想教育だという。
「水抜き」では、平壌市内の普通江(ポトンガン)ホテルや羊角島(ヤンガクド)ホテルなどで3~4日間かけて、「わが国(北朝鮮)も韓国に劣ってはいない」ということが教え込まれる。同時に、団員同士で互いの行動を批判し合う「総和作業」も行われるという。
応援団員らは「水抜き」を通じて、韓国で見聞きしたことを口外してはならないと言われているはずだ。なぜなら、金正恩党委員長は韓流の流入を非常に恐れているからだ。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真北朝鮮で韓流が密かに広まりはじめたのは、2000年頃からのことだ。CDやDVD、ハードディスク、SDカードなどの記録メディアの発展、さらにはノートテルというポータブル再生機の普及を受けて、韓流をはじめとする海外コンテンツは拡散した。こうした状況に、北朝鮮当局は極めてナーバスになっている。韓流取り締まりを担当するタスクフォース「109常務」を組織し、時には韓流の動画ファイルを保有していたという容疑だけで、女子大生を拷問し悲惨な末路に追い込むほどだ。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)韓流が拡散する背景には、北朝鮮の庶民たちが公営メディアが流すプロパガンダ文化に辟易していることがある。プロパガンダどころか、金正恩氏が激怒する場面の動画がテレビで流れることもある。とても、庶民が楽しめるようなコンテンツではない。
(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導)人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真
最近では、韓流コンテンツを見て韓国文化に憧れ、それが動機となって脱北する若い女性も少なくない。2015年に脱北して韓国に定着した北朝鮮出身の女性は筆者に、「北朝鮮で冬のソナタをこっそり見た。あんなロマンティックな恋愛をしてみたいと思ったのが北朝鮮を離れた最大の動機です」と語った。
韓流や海外文化によって体制への忠誠心が骨抜きにされる──金正恩氏はそんな危機感を抱いているのだろう。