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「喜び組」出身女優の栄光と堕落…彼女はいかにして金正恩に葬られたか

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かつての北朝鮮のスター女優、キム・ヘギョンは、張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長が処刑された翌年に殺された。彼女を映画界に導いたのは、無類の映画好きで知られた金正日総書記だ。彼は、当時の映画界の女優に不満を持っていたようで、新たな人材の発掘に乗り出した。そんな彼の目に止まったのが、「喜び組」を擁する党組織指導部5課でも抜群の美貌と知性を兼ね備えたキム・ヘギョンだった。【画像】キム・ヘギョン氏

最高指導者のお墨付きを得た彼女を含む3人は、演劇映画大学という通常のコースを経ないまま、5課から映画界にデビューした。

彼女の出世作となったのは、1997年に朝鮮芸術映画撮影所が制作した「幹は根から育つ」だ。町の嫌われ者だったチンピラが改心し、炭鉱夫となり仕事場で活躍するストーリーで、主演のイケメン俳優、リ・ヨンホの相手役となったのがキム・ヘギョンだった。単なるプロパガンダ映画ではなく、エンタテインメントとしても芸術作品としても評価の高いこの作品で、彼女は一躍スターの座に躍り出た。時期はわからないが、功勲俳優の称号を授与されたことが、出演映画のDVDのジャケットから確認されている。

残念ながらこの映画を見ることはできないようだが、ごく一部の場面が韓国のMBCの北朝鮮情報番組「統一展望台」で紹介されている。

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一方、独島(日本名竹島)をテーマにした2004年の映画「血まみれの略牌」は、北朝鮮の対外向けプロパガンダサイト「わが民族同士」に掲載されている。

彼女は、20代後半から30代前半に、護衛司令部の幹部を父を持つ貿易会社の社長と結婚し、2人の息子を設けた。美貌と知性、演技力、人気に加え、権力まで手にした彼女は、徐々に堕落してゆく。

最高指導者に仕える奉仕員、喜び組のメンバーとして教育を受けた彼女は、高級幹部の間でも注目の的となった。夫や子どもを顧みず、朝鮮労働党作戦部所属の連絡所長(工作員の指揮官)など数多くの幹部と浮名を流した。浮気相手と、同棲したことすらあったようだ。

そんな彼女に最初の危機が訪れた。夫が麻薬を使用した容疑で当局に摘発されたのだ。彼女は職場から追われた夫と離婚し、強力なバックを失ってしまった。その頃に出会ったのが、張成沢だった。

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その経緯は詳らかでないが、当初は単なる「体目当て」の関係だったようだ。張成沢は彼女に会うたびに、数千ドルもするアクセサリーをプレゼントした。一種の口止め料だった。

逢瀬を重ねるにつれ、2人は深い関係となっていった。そして、誰にも気兼ねせずに会うために、張成沢は彼女に、平壌市中心部、金策(キムチェク)工業大学のそばにある150平米の超高級リバービューマンションを与えた。2012年後半、2人の間には男の子が生まれた。

そんな2人の関係は、張成沢の処刑というあまりにも衝撃的な出来事で幕が降ろされた。彼女は、その前から自らの身に迫りくる危機を察知していたことだろう。張成沢の最も近い側近だった李龍河(リ・リョンハ)党行政部第1副部長と張秀吉(チャン・スギル)同副部長(兼勝利貿易総会社社長)が、張成沢より2ヶ月はやく処刑されていたからだ。

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問題は、彼女が自宅に多くの人を招いて開いた、贅の限りを尽くした誕生日パーティだった。

出席者だった高級幹部から問題提起がなされ、それをきっかけに組織指導部が調査に乗り出した。

彼女は観念したのか、張成沢が処刑された直後の2013年12月中旬、組織指導部に自首した。組織指導部内部の関係者によると、金正恩氏と組織指導部は初めから彼女を粛清するつもりはなかったという。ところが、その後の行動が自らを追い込む結果を生んでしまった。

キム・ヘギョンは、自首に際して5万ドルを当局に差し出した。全財産を差し出すことで、命乞いをしようとしたのだろう。しかし、それは組織指導部が調査を通じて見積もっていた彼女の隠し財産と比べ、あまりに少なすぎる額だった。

家宅捜索に踏み切った組織指導部は、4〜50万ドルの現金と、相当量の金(ゴールド)を発見した。しかもそれらは、財産を隠匿する目的で作られた特注の冷蔵庫の中にあった。そればかりではない。彼女には、現金やマンション4戸を含むさらなる隠し資産があったのだ。

組織指導部は、彼女に対して加重処罰の処分を下し、隠し子と共に政治犯収容所送りにした。しかも彼女が送られたのは、「この世の地獄」とも言われる、一生釈放されることのない「完全統制区域」だった。ただし、前夫との間に生まれた2人の息子は今でも平壌で暮らしていることが確認されている。

ただ、北朝鮮のサイトに彼女が出演した映画が残されていることを考えると、女優キム・ヘギョンは完全に消し去られた存在ではないようだ。