金氏の粛正の背景には、彼がトップを務めていた国家保衛省(秘密警察)の越権行為があったとの説がある。同省が主導した粛清の相当部分が、特定の有力者が自分の政敵を抹殺するために虚偽の密告を行って仕組んだ「謀略」だったと判明したというのだ。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)保衛省は、拷問を厭わぬ残忍さで庶民から恐れられ、同時に忌み嫌われている。また政治犯収容所も運営し、北朝鮮の体制を支える恐怖政治の象徴となってきた。そしてそれだけに、国際社会からの人権攻勢の矢面に立たざるを得ないのだ。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)金正恩氏が、恐怖政治に対する庶民の反発をやわらげ、あるいは人権侵害に対する国際的な非難をかわす狙いで、金氏に全ての責任を押しつけるのはあり得ないことではない。先述の国家安全保障戦略研究院は、黄氏は組織指導部で果たした役割から復帰する可能性があるが、金氏の復帰は難しいという見解を示している。