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【写真】大同江養豚工場を現地指導した金正恩氏

大同江養豚工場を現地指導した金正恩氏(2016年8月18日付朝鮮中央通信より)

「テジ」とは

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今年8月、金正恩氏は「大同江(テドンガン)ブタ工場(養豚場)」を現地指導した。この様子がテレビで放映されるやいなや、正恩氏を「テジ」と呼ぶことが流行りだしたのだ。

テジとは、朝鮮語でブタのことだ。庶民らは、放送を見ながら次のように悪口を浴びせかけるという。

「友達に会えて嬉しそうにしているな」

「ブタのなかでも人間の格好をしているやつが一番重そうに見えるな」

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市内の市場では、まるまると肥えた家畜を「指導者級」と呼ぶ。もともと北朝鮮では、男性はふくよかな体型が好まれてきた。しかし、最近では韓流ドラマの影響で、スラッとした男性が好まれるようになったことも、正恩氏が悪口のネタになる理由の一つだ。

ただし、金正恩氏も最初から今ほどの肥満体だったわけではない。登場時は太り気味ではあったが、ある時期から急激に体重が増加した。気になるのは「血の粛清」が激しくなるのと体重の増加が軌を一にしていることだ。

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庶民たちは、正恩氏の政治手法についても「エゴイズム政治」「疑い政治」などと言って非難する。「人民愛」や「親しみやすさ」を強調しながらも、実際には自分勝手で側近ですら信用していないことに対する批判だ。

こうした言葉は正恩氏だけでなく、「民族の太陽」と崇められる祖父・金日成氏も対象になっている。平壌市民の間では「太陽を信じて生きる」という言葉がよく使われている。しかし、ここでの「太陽」は金日成氏でなく、ソーラーパネルを意味するのだ。

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金正恩体制を批判してきた筆者としても、もさすがに「ブタ」呼ばわりはどうかとも思う。しかし、北朝鮮の庶民たちは、公開処刑、拷問、政治犯収容所に象徴される恐怖政治の下で怯えながら生活し、一寸先は闇という人生を送っている。金正恩体制に怒りと不満を抱えた庶民たちからすれば、ブタ呼ばわりするぐらいでは飽き足らないだろう。