国際的な人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は先月31日、「理由もなく夜に涙が出る 北朝鮮での性暴力の実情」と題した報告書を発表した。(英語版、韓国語版)
金正恩氏が権力の座に就いた2011年以降に脱北した54人と、脱北した北朝鮮の元公務員8人を対象にしたインタビューを元に作成されたこの報告書では、北朝鮮における性暴力の現状と、それを生み出す社会的土壌について詳しく解説されている。
報告書が挙げたのは、社会の根幹を揺るがす大きな変化が、弱い立場にいる女性を犠牲にしたという点だ。
「もはや日常生活の一部」
北朝鮮はかつて、世界に類を見ないほどの配給依存型の社会だった。人々は食料品、衣服から住宅に至るまで、ほとんどすべてのものを国から配給として受け取っていた。ところが、経済、農業政策の積み重なった失敗、共産圏の崩壊で援助が得られなくなったことで旧来のシステムが崩壊。そこに自然災害が重なったことで、1990年代後半に「苦難の行軍」と呼ばれる未曾有の食糧危機が起きた。