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北朝鮮が水害復旧「してるふり」…被害増やす速度戦の悪習

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今年8月に朝鮮半島を直撃した台風15号(コニ)の影響で大水害に襲われ、400人の住民が死亡するなど甚大な被害を受けた北朝鮮東海岸の羅先(ラソン)市。金正恩氏は現地入りして、早急な復旧を指示した。

新しい家に入居して感激のあまり泣いている被災者。しかし現実は異なるという(画像:我が民族同士)

労働党創建70周年記念日を前にした10月8日、完成した災害復興住宅を金正恩氏が視察したことを北朝鮮の国営メディアは大々的に喧伝した。新しい住宅に入居した人々が喜び、踊り、むせび泣く様子も伝えている。一方、デイリーNKでは「欠陥だらけで住めたもんじゃない」という住民の声を伝えている。

復興住宅「すでに破損」

復旧工事は終わったことになっているが、実際は未だ行方不明者の捜索すら終わっていない状況だと咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

情報筋によると、復興事業に投入された人員は4万5000人にのぼるが、その半分が未だに羅先に残り、200人に及ぶ行方不明者の捜索活動に当たっている。

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国営メディアは、羅先の災害復興住宅が完成したと喧伝しているが「あんなのは大嘘」だと情報筋は一蹴した。たしかに完成した家はあるが、工事を速く終えることだけしか考えていない「速度戦」で建てたもので、一部の家はすでに破損しているという。

軍人たちは、村の周辺で復旧作業を行っているが、12月に入り寒さが厳しくなったので、まともに工事ができない状況となっている。

「手抜き」で事故多発

しかし、一度撤収して来春に工事を再開しようにもできない。金正恩氏が現地指導を行い「早急に完全復旧させよ」と指示を下したので、撤収でもしたら重罪に問われかねないからだ。なので、仕方なしに復旧工事を「するふり」をしているという。

住民からは「やたらめったら人が多いけど、こんなに寒いのに何ができるというんだ」「この有様では、遺体は来春の雪溶けまで見つからないだろう」「羅先の悲劇はまだ終わっていない」などとネガティブな反応が表れているようだ。

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北朝鮮では従来から、金日成・正日親子の誕生日や政治的に重要な日に成果として発表するために、無理やり工期を短縮する突貫工事「速度戦」が繰り返されている。

そのため工事は手抜きにならざるを得ず、事故が多発している。平壌では23階建てのマンションが崩壊する事故が発生。高速道路の工事現場では、橋が崩落し500人が死亡する事故が起きている。後に韓国へ逃れた目撃者たちの証言によれば、この崩落事故で川原には原形をとどめない死体が散乱し、現場は救助の看護師たちが気を失うほどの地獄絵図と化したという。

ところが、「中身はともかく、とりあえず速くできればいい」という考え方が蔓延している上に、実績作りばかり考えている幹部の「過剰忠誠」も相まって、今後も速度戦はなくなりそうにない。