北朝鮮では、金王朝の権威を傷つけるような行為は政治的事件に発展する場合もある。今回のケースでは、責任を問われる恐れを感じた上層部が、キム少尉をスケープゴートにしたのかもしれない。
北朝鮮は長年に渡って人権問題で国際社会からの批判を受け続けていた。表向きは反発しつつも、批判を意識し、人権状況の改善と「正常国家」であるとアピールするためにこのような措置を取ったことも考えられる。
しかし、北朝鮮の独裁体制を支え続けてきた暴力や拷問などが、そう簡単になくなることはないだろう。金正恩氏の独裁権力が、恐怖政治(暴力)によって支えられている状況に変わりはないのだ。
(参考記事:手錠をはめた女性の口にボロ布を詰め…金正恩「拷問部隊」の鬼畜行為)韓国の統一研究院が今年4月に刊行した「北朝鮮人権白書2018」は、「北朝鮮には刑法と刑事訴訟法の(拷問禁止の)規定があるにもかかわらず、刑事事件の処理過程で拷問や非人道的処遇が頻繁に発生し、被疑者の尋問において自白を引き出すための手法の一つとして拷問の使用が確立するなど、拷問が蔓延している」と指摘している。
(参考記事:殺人・拷問・強姦…金正恩氏の「極悪警官245人」の手配書)