DAILY NK JAPAN

「性暴力の末に非業の死も」北朝鮮女性の人身売買はこうして行われる

人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真

※この記事には、性暴力の被害に関する具体的な記述が含まれています。

米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、英国のNGO、コリア・フューチャー・イニシアティブは20日、中国国内の脱北女性に関する実態調査をまとめた報告書を英国下院に提出した。

「性奴隷:中国国内の北朝鮮女性と少女の売春、サイバーセックス、強制結婚」と題されたこの報告書は、2年をかけて韓国に居住する人身売買の被害者45人と研究者、事情を知る中国人、人権団体関係者の証言をまとめたものだ。

報告書は、数万人に達する北朝鮮女性と少女が中国で売春と関連した取引で搾取され、人権を侵害されおり、極めて劣悪な環境のもとに置かれていると述べている。また、その「市場規模」は年間で1億500万ドル(約116億円)に上るとの指摘もある。

人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真

人身売買は、次のようなかたちで行われる。

ブローカーは北朝鮮国内で女性に接近し、食べ物や衣服を提供し、「韓国に行く機会があるかもしれない、中国に行こう」と持ちかける。女性はブローカーを怪しみつつも、誰が敵で誰が味方かわからない混乱した状況で、嫌々ながらブローカーからの提案を受け入れてしまう。

売春施設は中国東北の大都市郊外にあり、15歳から25歳の女性が、強制的な膣、肛門性交、自慰、痴漢行為を強いられている。

私は他の6人の北朝鮮人女性ともにホテル(にある売春施設)に売られた。食べ物も充分ももらえず、扱いはひどかった。8ヶ月後、私たちのうちの半分が再び売り飛ばされた。ブローカーにひどいことをされた。私の体には傷跡が残っている。(ブローカーに)殴られ、ギャングに足を刺された跡だ。 (清津<チョンジン>出身のキムさん)

人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真

性産業で人身売買された回数は「1回」が41%、「2回」が45%、「3回」「それ以上」がそれぞれ7%だった。このように、売春施設から別の売春施設に「転売」される事例は多数存在する。

その顧客の中には、韓国人も含まれている。

大連には多くの韓国人がいる。私たちは名刺を作ってホテルの部屋のドアの下に入れて歩いた。韓国語の名刺だ。私たちは主に、韓国企業が性接待を行うバーに連れて行かれた。生まれて初めて韓国人に会ったのは、売春の場でだった。 (キムさん)

人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真

中国で働いていて、人身売買の被害に遭う女性もいる。

中国・遼寧省の農場で働いていたころ、ある男に都会でもっと稼がないかと持ちかけられた。お金が欲しかったので首を縦に振ったが、彼のことは疑っていた。翌日の夜、彼の車に乗って(遼寧省)鞍山のそばの床屋に疲れていかれた。私は売春施設に売られたのだった。 (平安北道<ピョンアンブクト>鉄山<チョルサン>出身のイムさん)

一方、強制結婚の被害に遭う女性も少なくない。主に地方で行われ、中国人男性に拉致、虐待、監禁され、中には韓国に売り飛ばされた事例すら存在する。

遼寧省や黒竜江省の国境地域に住む中国朝鮮族の間では、若い北朝鮮女性が7500元(約12万円)から1万1600元(約18万5000円)で売買されていると報告書は指摘している。ときには、女性の親戚までが加害者に変身する。

14歳だったころ、中国に住む母のいとこが私に(吉林省)延辺朝鮮族自治州の繊維工場での仕事を斡旋してくれることになった。夜になってブローカーと共に国境の川を渡り、目的地の家に着いたとき、私はすべてが嘘であったことに気付いた。36歳の男が私を2万4000元(約38万3000円)で買ったのだった。私は彼の母に出産を求められる前に逃げ出した。 (咸鏡北道<ハムギョンブクト>茂山<ムサン>出身のファンさん)

中国の警察に、強制結婚の被害を通報しても、通報者が北朝鮮に強制送還されるだけで、何ら対策を取ろうとしない。それどころか、中国の警察官により売り飛ばされた事例もある。

警察官から身分証明書の提示を求められた。私は泣きながら自分が北朝鮮人であることを明かして(第三国に向かう脱北者が多く経由する)タイに行かせてほしいと懇願した。しかし、彼らは私を逮捕し公安局に連行した。10時間勾留されたが、一切の尋問はなかった。やがて彼らは私を車に乗せ田舎に連れて行った。私は人身売買ブローカーに売られていたのだった。(慈江道<チャガンド>出身のペクさん)

サイバーセックスの施設はより小規模で、最年少で9歳の少女が、カメラの前で性行為を強いられ、全世界に配信される。

男は私を車に乗せ、マンションに連れて行った。なんとそこには(北朝鮮の)少女たちがいた。彼女らが何歳かはわからなかったが、まだ胸も大きくなっていない2人の少女だった。私は、ベッドとその前にコンピュータとウェブカメラのある部屋に連れて行かれた。4人の男がやってきた。ギャングは私をレイプした。3人目にレイプされたとき、膣から出血した。それ以上のことは覚えていない。 (両江道<リャンガンド>恵山<ヘサン>出身のチェさん)

(参考記事:中国で「アダルトビデオチャット」を強いられる脱北女性たち

調査に応じた45人の女性はそれでも運良く逃げ出し、人権団体の協力で第三国にたどり着いた人々だが、救出されずに非業の死を遂げる女性が後を絶たない。

報告書は、世界各国の政府に対し、国境を超えた性産業と女性と少女の人身売買と闘い、中国国内の脱北者の救出と定住に協力すること、脱北者を北朝鮮に強制送還する中国を国際司法裁判所に提訴するなどの動きを行うこと、韓国政府に対しては北朝鮮の人権状況に対して沈黙しないことなどを求めている。

(参考記事:被害女性たちの血のにじむ証言…報告書「理由もなく涙が出る」を読む

一方の北朝鮮は、世界各国から相次いでいる人身売買の指摘を否定し続けている。

北朝鮮中央裁判所のパク・クァンホ参事は、9日に国連人権理事会で開かれた北朝鮮人権に関するUPR(普遍的・定期的レビュー)で「人身売買は共和国(北朝鮮)で想像すらできない犯罪行為で、共和国には存在しない」と人身売買の存在を否定し、「共和国のイメージを見出そうとする敵対勢力の陰謀策動による誘拐犯罪が存在するのみ」と陰謀論を展開した。

(参考記事:「人身売買国は言いがかり」北朝鮮、トランプ氏決定に反発