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「前科者から英雄が出た」反権力殺人に喝さい送る北朝鮮国民

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北朝鮮の各市・群には、人民委員会(自治体)の法務部と保安署(警察署)がそれぞれ管理する労働鍛錬隊が設置されている。軽犯罪者を教育改造するため、短期間の労働に従事させる収容施設だ。その内部では、受刑者たちが飢餓と幹部の暴行に苦しんでおり、住民の怒りの対象になっている。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋として伝えたところによると、「今年4月、介川(ケチョン)の労働鍛練隊で受刑者に日頃から暴行を働いていた40代の男性指導員が、真夜中の帰宅途中に殺害された」という。指導員はバイクに乗って家に向かう途中、道端に隠れていた1人の青年が振り回した凶器に頭を強打され、その場で死亡したとのことだ。青年はこの労働鍛練隊の元受刑者で、指導員に相当な怨みを抱いていたとのことだ。

北朝鮮では、こうした報復殺人が横行している。

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その多くは、無実の罪を着せられ、刑務所での服役を余儀なくされた人々の報復と見られている。

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北朝鮮の保安員(警察官)は取り締まりの権限を振りかざし、庶民からワイロを搾り取ることを生業としている。要求に応じなければ様々な言いがかりをつけて逮捕し、刑務所送りにすることもある。また、同様のやり方で女性に性行為を強要することもあり、悪徳保安員に対する庶民の恨みは深い。

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ただ、報復殺人の背景がどのようなものであっても、大衆の権力に対する挑戦を北朝鮮当局が見過ごすはずはない。当局は常に、こうした犯罪に対して極刑で臨んできた。

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RFAによれば、犯人の青年は保安署に自首したというが、刑罰など彼のその後については言及していない。捜査は終結したものの、「身に覚え」のある指導員や保安員たちは、「いずれ我が身」と恐怖心を募らせているという。

平安南道の別の情報筋はRFAに対し、「今のように生活が困難な時期は、当局は庶民に何でもかんでも罪を着せて、『見逃してやるから』とワイロをせびる。応じなければ鍛錬隊送りで、介川だけでもそのような受刑者が200人を超える」と指摘した。

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一方、「介川の労働鍛錬隊受刑者の中では、受刑者たちに凶悪を振るった横暴な幹部が殺された話が急速に広がっており、幹部がこれを防ぐため腐心している。しかしニュースを聞いた受刑者たちは、『前科者の中から義士が出た』と痛快がっている」とも話している。

(参考記事:【実録 北朝鮮ヤクザの世界(上)】28歳で頂点に立った伝説の男