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「性上納してでも入りたい」は過去の話…朝鮮労働党の没落

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金正恩党委員長は昨年12月、朝鮮労働党第5回党細胞委員長大会で行った演説で、党の指導力と戦闘力を強化するには、党細胞の機能と役割をいっそう強める必要があると述べ、そのためには党生活の組織と指導の強化が必要だと強調した。

わかりやすく説明すると、「数人から数十人単位の労働党の末端組織(党細胞)が、所属する党員が義務(党生活)をきちんと守っているか確認し、指導を強化すれば党はきっとうまく回ってかつての地位を取り戻せるはず」という意味だ。

つまり、党の権威失墜がそれだけ深刻であるということだ。

かつての北朝鮮においては、朝鮮労働党に入ることが出世のための絶対条件だった。そのため、入党と引き換えにワイロや性行為を要求されることが当たり前のように起きていたという。

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ところが今では、党員資格に憧れるどころか、なんとかして「党から足抜けしたい」と考える人が増えているのである。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、今月初め、党の中央委員会から党細胞の強化に関する指示が下され、それに伴う作業が始まった。平壌の情報筋によると、指示の内容は次のようなものだ。

「国際社会からの制裁がひどくなり、国の経済がさらに苦しくなった。このような時期だからこそ、党の革命思想を労働階級の指導的理念として強化、発展させなければならない」

これに伴い、各組織では党員がきちんと党生活を行っているかの監査が始まったが、ほとんどの党員はこれを鼻で笑っている。

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「配給システムがなくなるなどして、党員であることのメリットはほとんど何もなくなった。党員資格も、もはや形ばかりのものに過ぎない。それなのに、今さら党生活を再点検するとは一体どういうことだ。カネを払ってようやく手にした党員証だが、党員になってやることと言えば国にせっせとカネを貢ぐことだけ。党員になることに何の意味があるのか」(咸鏡北道の情報筋)

現状においては、党員であることが不利に働くことすらある。

たとえば、外貨稼ぎ会社は党員の社員採用を避ける傾向にあるという。党の規約は6条42項で「党員が5人から30人までの単位(機関、企業所)には党細胞を組織する」と定めているが、党細胞が行う党生活総和の内容は、上部機関に報告される。すると、社内の機密情報が漏れてしまい、商機を横取りされるなどして不利益をこうむる。そこで、党細胞を作らなくても済むように、社内の党員の数を減らしたがっているのだと情報筋は説明した。

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もっとも、金正恩氏とて党の没落ぶりについては厳しく認識しているはずなのだ。その証拠に、同氏は上述した党細胞委員長大会で、「非社会主義的現象を根絶するための一大革命的な攻勢を繰り広げる」と宣言した。

非社会主義現象とは、文字通り北朝鮮が標榜する社会主義の気風を乱すあらゆる行為を指す。たとえば賭博、売買春、違法薬物の密売や乱用、韓国など外国のドラマ・映画・音楽の視聴、ヤミ金融、宗教を含む迷信などなどだ。もちろん、その他の刑事事犯も含まれる。

しかし実際のところ、北朝鮮には社会主義の気風などほとんど残っていない。

1990年代に計画経済と配給システムが崩壊したために、その後はなし崩し的に市場経済化が進行。その過程で、売買春や薬物の乱用が、資本主義国も真っ青な勢いで蔓延した。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

そして、そのような社会悪の蔓延に乗っかる形で金儲けに走ったのが、党や司法機関の官僚たちなのである。世界最悪の監視国家である北朝鮮では、彼らのお目こぼしなくして「悪事」を働くことはできない。しかしそれは、彼らと癒着すれば何でもできることを意味する。

ここまで腐敗した党組織が、単なる党生活の正常化だけで再生するとはとても思えない。しかし結局のところ、金正恩氏が国を統治するうえで使える組織は、こんな朝鮮労働党しかないのだろう。

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