米国務省で北朝鮮の人権問題を担当するキング特使は2日、米ワシントンDCの戦略国際問題研究所(CSIS)で開催された討論会で発言し「人権問題と関連して北朝鮮当局者を制裁対象とする方向で検討を行っている」と明らかにした。
一方、朝日新聞は先月28日付で、米国政府は政治犯収容所の運営に関与している国家安全保衛部(以下:保衛部)と人民保安部の幹部など10人前後を、早ければ今月中に制裁対象として指定する見通しだと報じている。
歓迎すべき動きである。しかし、保衛部が管理する政治犯収容所の凄惨な実態や、彼らの行う公開処刑の残忍さを考えれば、遅すぎたとも言えるし、ぬる過ぎるとも言える。
(参考記事:赤ん坊は犬のエサに投げ込まれた…北朝鮮「政治犯収容所」の実態)(参考記事:北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」)
ナチスの虐殺放置「今も後悔」
少し前、脱北者出身で北朝鮮の人権問題を世界にアピールする活動を行っている人物に、米国の要人が次のように語ったという話を聞いた。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真「米国は第2次世界大戦のとき、ナチスの絶滅収容所にユダヤ人を運ぶ鉄道を爆撃して破壊しなかったことを、今でも後悔している」
北朝鮮で日々失われていく人命を考えれば、今すぐにでも、そうした行動が起こされるべきではないか、とも思える。
しかし、現実は冷厳だ。たとえ米国が世界最強の軍事力を持っていても、金正恩体制のやっていることがいかに人倫にもとるものであっても、その現状を変えるための行動は、膨大なコストとリスクをともなう。「それを甘受してでも、北朝鮮の人々のために立ち上がろう」と決断することは、財政難を抱え、有権者の顔色をうかがわなければならない民主主義国家の政治指導者には難しい――少なくとも、今のところはそうだ。
「ヤバさ」に気づき始めた
ただ、こうした状況も、いずれ変わる可能性がないではない。変化を引き寄せているのは、ほかならぬ金正恩第1書記である。正恩氏は36年ぶりに開かれた朝鮮労働党大会で核実験の成功を自賛し、核武装強化に対する変わらぬ野心を世界に見せつけた。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真党大会を前に、北朝鮮が失敗を繰り返しながら弾道ミサイル発射を続けたのは、そこに搭載すべき核弾頭の完成が近づいているからではないか。大事な「切り札」を載せる運搬手段の、信頼性を確認しているのだ。
それが完成したら、近い将来、100発以上の核ミサイルが米軍やその同盟国である日本、韓国をねらうことになる。そんな状態で「万が一」のことがあれば、そこで生じる損害の大きさは想像を絶する。
甘受しがたいリスク
米国も、そうした「ヤバさ」に徐々に気づいているはずだ。
人気記事:金正恩氏が反応「過激アンダーウェア」の美女モデル写真つまり近い将来、北朝鮮の核兵器により作り出される危機が、米国や同盟国にとって「何より甘受しがたいリスク」であるとの判断が下される可能性があるということだ。
そのときこそ、周辺国は「より小さい」リスクとコストを甘受し、金正恩体制の解体を目指すかもしれない。
(参考記事:徐々にわかってきた金正恩氏の「ヤバさ」の本質)