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北朝鮮の虐殺責任者「必ず突き止める」…米国務次官補インタビュー

外部情報の流入で変化を促す

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デイリーNKと韓国の対北朝鮮ラジオ「国民統一放送」は、今月10日に非公開で訪韓したトム・マリノフスキー米国務次官補(民主主義・人権・労働担当)との単独インタビューを行った。

デイリーNKなどのインタビューに答えるマリノフスキー米国務次官補

同次官補は、北朝鮮において政治犯収容所の運営に関わったり、罪のない人々の処刑に関わったりしている人権侵害の責任者たちを「米国が必ずつきとめる」と明言。また、北朝鮮への外部情報の流入を促すことが朝鮮半島での平和を実現する上で重要だと指摘した。なお、インタビューは17日、国民統一放送により北朝鮮に向け発信された。(聞き手=イ・グァンベク国民統一放送代表)

責任の大き知らしめる

――2014年に「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書が公表されて以降、北朝鮮の人権状況に改善は見られるか?

COIの報告書が重要である理由は、世界中のすべての人々に、北朝鮮の住民の状況を知らせたことにある。北朝鮮国内での生活やその現実を赤裸々に示し、特に北朝鮮国内で政権に反対する声を上げたり、異なる考えを持ったり、当局の指示に反する行動をしたりした人々が、いかに処罰されているかを浮き彫りにした。

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この報告書が発表されて以来、北朝鮮の人権状況は世界の国々が対北朝鮮政策を立案する上で重要なウェイトを占めるようになっている。国連安全保障理事会だけでなく、米国、韓国、欧州などでは北朝鮮の人権状況について活発に議論されるようになっている。

同時に国際社会は、北朝鮮国内の変化をいかにすれば加速させられるか、虐げられている北朝鮮の人々をいかにすれば最もよく助けられるかを議論し続けている。

「代償を払わせる」

――米国は「人道に対する罪」を犯した北朝鮮の担当者の情報を収集しているようだが、その目的は?

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北朝鮮の政権内部には、現状がいつか変わることを感知している人々がいるはずだ。朝鮮半島の統一後、自分の人生がどうなるかを心配している人もいるだろう。もしそのような未来が来たとき​​、自分が仕事を続けられるか、カネを稼ぐことができるか、社会的に成功できるか心配している人々が北朝鮮政権内部にいるだろう。

だからこそ我々は、今日の北朝鮮で起こっている恐ろしい人権侵害において、彼ら自身の責任が非常に大きいことを知らしめたい。

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政治犯収容所を統括する人々、罪のない人々の処刑に関与する人々、脱北者を取り締まることに同調する人々に、自分たちがやがて国際社会の制裁対象リストに指定されるであろう事実を知らしめたい。そして最終的には、北朝鮮の人権侵害の責任者が誰であるか、我々が必ず突き止めることを、彼らに知らせておきたいと思う。

同時に、統一された朝鮮半島で、他の人々が成長、発展する時、彼らは下層の生活に留まらざるを得ないということを知らしめたい。つまり、彼らは現在の行為の代償を必ず払わされるということを知っておくべきなのだ。

そして、彼らが現在行っていることについて、考え直してもらいたい。自分たちの未来を想像しながら、今行っていることにおいて、よりましな決定を下すよう求めたい。

情報遮断は最大の罪

――あなたは、北朝鮮に外部世界の情報を流入させる重要性を繰り返し指摘しているが、なぜそれが必要だと考えるのか?

まず、全世界のすべての人々は好奇心を持っている。何かを知りたいということは人間の本能だ。私も北朝鮮での生活について知りたいと思っている。機会があれば、北朝鮮の人に直接会って、彼らの考えを聞いて、どのように生きてきたのか知りたい。

北朝鮮の人々も同じように、米国、韓国、日本、欧州など他の国に住む人々がどのように暮らしているかを知る機会を持つべきであり、知ることができなければならない。

だから、外国の映画や本を見たり、外国の人々と一緒に歴史を学んだり、自分の国が犯した間違いや成し遂げた成果について議論できなければならない。

北朝鮮の政権が犯した最も大きな罪のひとつは、北朝鮮の人々から、外の世界のことを知り、知識を得る機会を奪ったことだと思う。韓国にいる家族の生死を知らせないこと、他の国の国民について知ることができないよう阻むのは最大の犯罪だ。

ところが幸いなことに、最近の北朝鮮当局は情報の管理に手を焼いているようだ。北朝鮮においても、ますます多くの人が携帯電話を使うようになり、タブレットPCを使って映画を見るようになったからだ。ネットへの接続もいずれ可能になるだろう。

我々としては、このような変化を奨励するものであり、そのことが、平和を実現して紛争を終結させるという我々の目的に適うものだと思っている。

「米国批判も歓迎」

――最後に、今も息を潜めてこの放送を聞いている北朝鮮のリスナーに励ましと慰めのメッセージを。

まず、北朝鮮の人々が私のこのような話ですら、息を潜めて聞かざるをえない事実が非常に悲しい。いつかは誰も恐れることなく、自由に互いに会えるようになることを望む。

その時が来れば、皆さんが北朝鮮でどのように生きてきたか聞いてみたい。同時に、米国についての質問も皆さんから受けてみたい。たとえその質問が米国に対して非常に批判的なものであっても、そのような機会を通して米国について話すことができたらと思っている。

私はこの数年間に、多くの脱北者と会った。脱北という大変な決断をし、今では韓国や米国などで新たな生活を送っている人々だ。彼らは困難な経験を何度も繰り返し、その多くがまともな教育を受けられないなど不当な経験もした。

「再起する力」に期待

しかし、彼らは私が会った中で最も勇気ある人々だと断言する。なぜそう言えるか。

北朝鮮で苦しい生活を送り、戦って生き抜いてきた人々だからだ。またそういう人生を送ってきた人々であるだけに、米国や韓国で楽をして生きてきた人々より再起する力がはるかに優れており、クリエイティブで、多くの才能を持っているからだ。

一例として、北朝鮮でお金を稼ぐために懸命に努力した人であれば、おそらくアメリカの人々よりも、市場経済についてもっと知っているだろう。(商売の自由が与えられていない)北朝鮮で、物を売り買いして生き残ってきた人々だからだ。

そして、政治的抑圧に耐え、自由を奪われたからこそ、脱北者は米国や韓国の人々より自由の価値をより痛切に感じている。

脱北後の生活は苦しいことがないわけではないだろうが、彼らならではの強味も多いだろう。したがって、もし北朝鮮が今よりも自由になるなら、そして後日、朝鮮半島が統一されたら、北朝鮮の人々が世界で最も成功するのではないかと、そんなことを想像する。多くの困難と戦いを通じ、多くを体得したのだから、それは可能なことであると確信している。