2014年4月、ロンドン西郊の理髪店が、耳の上まで刈り上げた髪形でにっこり笑う北朝鮮の金正恩党委員長の顔写真を客引き用のポスターに使ったところ、北朝鮮の外交官らが押しかけて撤去させた事件があった。この前後、北朝鮮では若い男性が金正恩氏と同じヘアスタイル、通称「覇気ヘア」を強制されているとの情報が出ていたこともあり、「ロンドン理髪店襲撃」は一瞬だが世界的な話題になった。
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このとき、理髪店に押しかけた外交官は2人。そのうちの1人が、後に韓国に亡命した太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使だった。太永浩氏は韓国で出版した自叙伝『3階書記室の暗号 太永浩の証言』(原題)の中で、このときのエピソードを明かしている。
それによると、ポスターには「Bad hair day?」「男性客は15%割引!」と書かれていた。「Bad hair day?」とは、日本語で「ついてない日?」といった意味だという。
太永浩氏は、これを発見した同僚を伴って現場に向かい、理髪店主の視野に入る位置から、店の外観とポスターを写真と動画に収めた。店主が緊張の面持ちで見守っているのを確認すると、太永浩氏らは店内に入り、威嚇を込めた語調で言った。