「アナタは、あのポスターの写真がどなたのものかわかっているのか?朝鮮の最高指導者、金正恩元帥であらせられるぞ!われわれは朝鮮民主主義人民共和国大使館の者だ。朝鮮は、最高尊厳(金正恩氏)を愚弄する相手とは戦争もいとわない国だ。アナタはよく知らずにやったのだろうが、すぐにポスターをおろせ。そうしなければ、アナタはその結果に全面的な責任を負うことになるだろう!」
この言葉を聞き、店主は体を震わせながらポスターを下したという。それはそうだろう。この時期すでに、金正恩氏は叔父である張成沢(チャン・ソンテク)氏を処刑するなど、恐怖政治を本格化させていた。一部の処刑は衛星写真でその場面が捉えられ、海外でも報道された。理髪店主が恐怖を感じるのもムリはない。
(参考記事:「家族もろとも銃殺」「機関銃で粉々に」…残忍さを増す北朝鮮の粛清現場を衛星画像が確認)太永浩氏によれば、店主は「テロに遭う可能性」を考え、警察に相談したようだった。一方、太永浩氏は当時も今も、この店主に申し訳ない気持ちでいっぱいだという。同氏は本にこう書いている。