すると2人は「他の商人のところで量ってもらう」と言って、リュックを置いたまま、トウガラシの入った麻袋を運んでいった。商人は、2人がリュックを置いていったので安心して追いかけなかった。他の商品もあるので、その場を離れるのは危険だったこともある。
ところが、10分経っても2人は一向に帰ってこない。商人は不安になり、リュックを開けてみたところ、中にはいっていたのは砂だった。騙されたことに気づいた商人は、大慌てで市場の保安員(警察官)に通報し、あちこちを探したが、結局見つからなかったという。
この水南市場は、韓国・ソウルにある東大門市場の2倍の規模を誇る北朝鮮有数の巨大市場だ。探したところでそんなに簡単に見つかりはしないだろう。一方では、若者が群れをなしてトウガラシや調味料の入った麻袋を次から次へと盗み出す事件も発生しており、それらの盗品が市場の外に運び出されるのに数分もかからないとのことだ。
生き馬の目を抜くような北朝鮮の市場で、商人も相当気をつけているようだが、それでも被害に遭う人がいるのである。